仕事は珍しく手につかなかった。1日中ぼんやりしてた。
何回も怒られたが怒られた事すら上の空だった。菜穂の事ばかり考えていた
「どうして泣いたんだろう」家に帰り12時を越え深夜4時になっても考えてた
そんな時、ごく自然な一つの答えに当たった「菜穂は俺の事が好きだからあんな風にしたかもしれない」
菜穂が好きでもない人にそんな事するって考えは菜穂に失礼すぎる。菜穂はそんな子じゃない
それ以上にわかった答えがあった。僕は菜穂がずっと大好きだったって事
小学校の時もみんなに菜穂が大好きだと言ってやりたかった
中学校の時も菜穂が大好きだから一生懸命マラソン走った
勉強は嫌いだったけど大好きな菜穂といれる空間が大好きだった
高校の時には菜穂が大好きだから勉強中にキスしようとした
大学の時には少ないバイト代崩してマフラーをあげたかった人は大好きな菜穂だった
それどころか彼女がいてもいつも意識しているのが大好きな菜穂一人だけだった
他にあれもこれも思い返すと菜穂が大好きで大好きで仕方ない過去ばかりだった
ただ認めてなかっただけだった。よし今からでもいいからメールしよう
こんな大好きで大切な気持ちに気付かせた菜穂なんてロクでもない
まずとりあえず心配で仕方なかった。謝ろう。あわてずにしっかり送ればいい
「こんな朝方にごめんなさい。昨日は一緒に寝てくれたのに
何も言わずに帰ってごめんなさい。また起きたらメールください」
って送った。返事はいつ返るのかもう返って来ないかもしれない
そんな事を考えてたら10分くらいでメールが返ってきた
きっと菜穂も同じような気持ちで眠れずに起きてたんだ
メールは「ねぇ?なんで起きてるの?明日。ってか今日仕事だよね
女の子にフラれて情けなく返って来るような人が
なにを人の心配してるの?ありがとう。ちゃんと寝て仕事行って
おばちゃん安心させてあげるんだよ。メールいつでもしておいでね。てかするからね」って
やっぱりフラれたって知ってて聞かなかったんだ。
菜穂が一番たまらない気持ちでいただろう自分が泣くような事はそっちのけで
自分よりも僕や母ちゃんの事を先に考えてくれる
菜穂が優しいからまた涙が止まらなかった
そんな優しい子だから僕は一番に菜穂の事を考えてあげたかった
大好きだ「会いたい」とメールしてその日仕事が終わったら会う事になった
菜穂の家でご飯も用意してくれるって。
菜穂は一つ一つが優しいから見逃さないようにするのが大変だロクでもないくらい優しかった
【24歳の時】
菜穂の事大好きなんだ。ただそれをちゃんと素直に伝えられればそれでよかった。
菜穂に言わせようとするんじゃなくて自分からちゃんと。
フラれたらもうちょっと離れた所で暮らせばいいか。そして相変わらずの毎日を過ごせばいい。
その日、仕事が終わると菜穂に会った。
帰ると菜穂は家の近くの曲がり角で待っててくれた
「おーい」って手を振ってくれた。一昨日の事はまるで何もなかったように接してくれた
菜穂の家族とご飯を楽しく食べた、その時も菜穂はずっと明るくしてくれた。
ご飯が終わり菜穂の部屋で菜穂と並んでソファーに座り長い沈黙が続いた
僕は切り出した「昨日は…勝手に帰ってごめんね」
菜穂「うん…いいの」僕「うんごめん」ここで予想もしていなかった答えが返ってきた
菜穂「いいの…起きてたから」
起きてたんだ。起きてたのに声掛けれなかったんだ。切なかっただろうな。
と、考えさせる菜穂はロクなもんじゃない
【24歳の時】
菜穂は続いてこう言った「わかってないなぁ」って。
わかってない。菜穂の事はわかってない、そうやって言われても仕方ないかもしれない
僕がわかる事と言えば僕が菜穂の事が大好きだって事くらいかもしれない
だから「わかってるよ」って言った。菜穂「何をわかってるの?」
僕「俺は…菜穂が好きなんだ。大好きなんだ、それは自分でわかってる」
菜穂は信じてくれなかった。「何を言ってるの?からかってるの?」って。
僕が菜穂の事好きだなんて今さら気付いて口にしても信じてもらえないくらい
時間が経ってたのかな。少し残念な気持ちでいると。菜穂がこう言った
「あなたじゃなくて、ずっと好きだったのは私のほうだよ」って。
え?今、聞き間違えたかな?
そうやって聞き間違えを疑いたくなる菜穂なんてロクでもない
菜穂は泣いていたけどちゃんと言った「ずっと、ずっと好きだったんだよ!わかってるの?」って
でもそう言われてさっき菜穂が僕の言う事信じなかった気持ちがわかった
菜穂が俺をずっと?いや、え?信じられない。
僕「でもさ、大学の時彼氏いたよね…」
菜穂「はぁ…いません。見た人の事でしょ?あの人はサークルの人
もぅ、絶対勘違いしたと思ってた、結局告白はされたけどお断りしました」
僕「え?じゃぁ高校の時は?…好きだったの?」菜穂「好きに決まってるよ、
学校違うのにマフラーあげたじゃん。なんでマフラーのお返しが塩ようかんなの?」
僕「あ…仏壇の前に置いていたので」
違うよ菜穂。俺だってマフラーあげたじゃないか、大好きだから
マフラーのお返しが塩ようかんだと思ってるとかでも言い訳はしなかった
菜穂はロクでもない。
【24歳】
ずっと…ずっと…彼氏もいなかった…あれ…ひょっとして…え?
僕「あれ?菜穂…変な事聞くよ…菜穂はキスした事ある?」
菜穂「うん、あるよ」僕「あぁまぁそれくらいはあるね、普通、うん」
菜穂「あなたとだけ」って指さされた
マジで?この子、初めてさん?
こんな可愛い、菜穂が、あんな人気者で告白ばっかりされてた
菜穂が初めてさん?
菜穂はヘナチョコの僕なんかが敵わないくらい意思が強くて偉大だった
可愛い過ぎてロクなもんじゃない
【24歳】
菜穂はボロボロ泣きながら「ほんとにわかってくれてるの?
小さな頃から小学校の時も中学校の時も高校も大学も今も大好きなんだよ?」って言った
ただただ驚きで僕はどうやって答えたらいいかわからなくなってた。
すると菜穂は席を立って机の引き出しをあけて何かを取り出して僕に見せた
「はい、恥ずかしいから今日は隠してたけどいつもは飾ってる」って
それは俺と菜穂が5歳くらいに撮った二人がニコニコして手をつないでる写真だった
それを見た瞬間、涙が止まらなくなった。5歳の二人がニコニコ手をつないでる写真
その二人はお互いの事が大好きだから大好きと言い合い当たり前みたいに一緒にいる
僕は大人になるにつれそんな当たり前ができなくなってしまってた
菜穂の事をみんなが好きって言うから自分は遠慮しておこうとか、自分にはお高い人だとか
菜穂はあの頃と変わらずずっと真っ直ぐに見てくれてた
菜穂がよく言ってた「好きな人」「あなたがよく知ってる人」それは他の誰でもない僕でした
それなのに菜穂の事好きで好きで仕方なかったのに自分をごまかしては逃げてばかりで
僕ばっかりが曲がり続けて当たり前から目を反らしていた。
[好きだから好きと言って一緒にいる]そんな当たり前の事を写真の中の二人が
今の僕に教えてくれた。僕は菜穂の手を取り抱きしめてもう離さないようにして
「もぅねずっとずっと一緒にいるから僕の彼女になって下さい」って言ったら
菜穂は「…はい…じゃぁね今日を記念日にするんだよ」ってやっと笑ってくれた
そしてキスをした
僕を泣かせる名人の菜穂なんてロクなもんじゃない
【それからとこれから】
ただの幼なじみだった僕と菜穂は彼氏と彼女になりました。
菜穂は僕の事をダーリンって呼ぶ事に決めたみたいです。
早々に菜穂と菜穂の両親には結婚しますと伝えました。
菜穂だからもうちょっと落ち着いたお付き合いになるのかと思いきや。
毎日毎日大好きと言ってくれるので嬉しくて負けないように言い返すのが大変です
いつもしっかりしてたお姉ちゃんみたいだった菜穂ですが最近はちゃんと甘えてくれるから
ちょっと僕もお兄ちゃんになったのかなと調子に乗ってしまいます
今まで男の子とお付き合いした事ない菜穂だから学生時代にできなかった事を
全て取り返してやろうと思い、遊園地にも水族館にもカラオケにも色んな所に行きました
菜穂はほんとロクでもないヤツです。可愛くていい子で誰からも好かれて天使のような笑顔で
僕の事を誰よりもわかってくれて誰よりもいつも優しくしてくれるロクでもないイイ子です
僕にとっては世界中探してもこれ以上の人はいない、ロクでもないくらい大切な人だから
こうやってしてくれたロクでもない菜穂の素晴らしい仕打ちに対しては
一緒にいてクリスマスにはプロポーズして結婚して一生かけて
一番幸せにする事で仕返ししてやらないと気がすまないのです。
菜穂が僕の幼なじみに生まれて来てくれた事はほんとロクでもないくらい幸せな宝物です
【終わり】
話を聞いてくれた方々へ
下手くそな文章でしたが読んでいただいてどうもありがとうございました
【おしまい】
引用元: ・https://raicho.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1292064768/