うざかったらあぼんして。
A男:俺
B子:嫁
女性に縁がなかったもんで、焦って元嫁に媚売りまくってなんとか結婚したはいいが、
結局預金全額持ってかれた挙句、ひでえモラハラ受けて重度の鬱病になった。
会社の上司がよくしてくれて、なんとか職を失わずに済んだ。
半年かけてなんとか離婚することができて鬱の原因から解放されると、
徐々に脳味噌が元の状態に戻ってきた。
鬱真っ盛りの時は人の顔を見ても美醜の判別ができないぐらい脳味噌がやられてたんだが、
回復してきたある日、事務にめちゃくちゃきれいな人がいることに気づいた。
俺的に、じゃなくて、多分10人中9人はきれいって言うと思うレベル。
それからは社内で見かけると抗えない感じでチラチラ見ちゃうようになる。
だが、話かけたいとかお近づきになりたいという気持ちは全くない賢者モードの俺。
そりゃそうだ。
大学時代に自分が女性とお付き合いする程大人じゃないってことを思い知った上、
徹頭徹尾失敗だった結婚→鬱病→ 離婚の最強コンボ直後に、
懲りもせずにまた女性とお近づきになりたいなんて言ってたら救いようのないただの阿呆だ。
もう一生独身でいいやって思いつつ、
当時まだ20代なのに老後の痴呆対策にピアノでも始めようかと思ってたぐらいだったもの。
美人は見てるだけが正解です。
そんでチラ見生活が確か1ヶ月ぐらい続いた。
大分精神的な余裕も戻ってきた頃、
鬱前にも所属していたサークルの祭り好きの先輩が「合宿しようぜ!」と言ってきた。
サークル仲間にも迷惑+心配を掛けたし、
ここらで復活アピールも含めていっちょやったるか!
という気になったので、合宿計画開始。
すると数日後、例のきれいな人から「A男さん」て声かけられて少々驚く。
先輩、なぜかサークルに所属していない事務の女性数名にお誘いをかけていたらしく、
しかも「参加・不参加はA男に伝えて」と言っていたらしい。(聞いてねぇよ)
これが初会話だったんだが、あれだ。鉄壁の賢者モードだと、
意表を突かれた喪男でも美人と普通に会話できるんだなってこの時初めて知った。
かつての俺なら間違いなくテンパってうまく喋れない。
この時初めて、そのきれいな人がB子さんという名前であることを知った。
結局、B子さんだけでなく他の事務の人も合宿不参加という回答だったんだけど、
挙動不審になることもなく「また機会があったらどうぞ~」と、
当たり障りの無い、完璧にニュートラルな対応ができた。
すごいぜ賢者モード。
それから数日後、俺が退社しようとしてたら人気の無い階段でバッタリB子さんに会った。
ちょっと話してたら、
「お昼に買ったんですけど余っちゃったし、一人暮らしって聞いたので・・・」
って言ってパンをくれた。
ありがとう鉄壁の賢者モード。
ほとんど動じず、即座に「お、ラッキー。今日の晩飯浮いた。」と思えたよ。
礼を失しないよう普通にお礼を言って、
その日は部屋に帰ってからおいしくパンを頂いた。
それから更に数日後、会社で仕事しててちょっとトイレに行って席に戻ってくると、
椅子に紙包みが置いてあった。
何だろうと思って中身をみるとパンが。
ん?なんか紙切れが入ってる?と気づき、中から取り出すとそれはメモだった。
「飲み会でもあったらまた気軽に誘ってください(行けないかもしれないけど・・・)
パンは夜食(おやつ?)にでもどうぞ。」
更に驚いた事に、メッセージとともに携帯のメールアドレスが記載されている。
が、誰という名前は記載されていなかった。
すると近くにいた上司が「それ、B子さんが置いて行ったぞ。」と教えてくれた。
なにこの超展開?と思いかけたが土壁の賢者モードで、
俺の平常心はぴくりとも揺るがない。
美人のメアドゲットとか今までの人生で一度もなかったけど揺るがない。
揺るがずに自分の部屋に帰ってから理性総動員で「完全無欠に普通」のお礼メールを送った。
そしたらB子さんがねー、なんつーか感じのいい楽しげなメールをホントにマメにしてくるんだわ。
メールの文章読むと頭もよさそうなんだよねぇ。
俺賢者のハズなのになんかちょっとだけ楽しくなってきちゃって、
いつの間にか、ちょっとひねったオモシロメール送るようになってた。
で、数日のメールのやりとりの後、
なんとB子さんの方から会ってお話しませんかというメールが。
なにこの超展開?と思いかけたがそれでも土嚢の賢者モードは揺るがない。
揺るがないけど土嚢じゃ強度も高さも足りない。
「すげえ美人が、喪、かつ×1の俺に、会って話したいとか意味わかんねえ。」
↓
「もしや、アレか?罰ゲーム的な釣りか?」
↓
「いやいや、メールからの印象だと品がある上に知的な人だからそれはないはず。。」
強度も高さも足りない結果、俺の方から「いいですよ、じゃあいつにします?」とメールで聞いちゃった。
心の中では「会って話するだけ。だって俺は賢者だぜ?」とか言い訳しながらも。
そしたらすぐにB子さんから返信。
「今からでもいいですか?」
ってオイ!!
今日平日ど真ん中なんだけど!?
こういう場合、会うのって普通次の土日とかになるんじゃないの!?
そんなにすぐ俺と話がしたいの!?
なわけねーよ釣りだよ釣り確定だろコレ!!
おおおおちけつおれッ!っておちつけるわけねーだろ!
B子さん間近で堂々と見つめながら長時間お話できちゃうんだぜ!!?
でもでも俺まだメシ食ってないし、メシ食うだけならいいよねいいよね??
とかなり動揺しながらも了解メールを送る。
もうお互いに仕事終わって自宅に戻っていたので、
お互いの中間地点のファミレスで待ち合わせ。
俺の方がファミレスに到着するのが早く、
入り口付近でドキドキしながら席待ちしてた。
んで、メールの流れから勢いだけでファミレスまで来てしまったが、
ちょっと冷静になって考えた。
今までのメールのやりとりを考えれば、これは多分釣りでも罰ゲームでもないだろう。
B子さんは俺に興味を持っている。
俺は今後どうすべきか。
勢いでノコノコここまで来てしまったけど、
俺はB子さんと友人レベル以上に仲良くなるべきではないだろう。
なぜなら、B子さんは独身でしかも結婚を意識する年齢だから。
俺は子供はいないとはいえ×1な上に、
鬱病の再発の恐れもあるような状態。(まだ、時々ひどくダウナーになるときがあった。)
俺みたいな不良債権と友人以上の関係になるなんて、B子さんのためにならん。
これが単なる俺の自意識過剰であればそれに越したことはないけど、
いずれにせよ、この関係は穏やかにフェードアウトが正解だ。
何も期待するな。
期待もさせるな。
こんな感じで自分を落ち着かせ、改めて鉄壁の賢者モードに切り替えた。