17: 恋人は名無しさん 2007/11/20(火) 00:07:27 ID:4DKzhbUg0
並行しておかしなメールが届き始めた。T男の不倫相手による告発文という体裁で、内容はひどいものだった。
私とN男、S男の三人がそれを受け取っていた。M子にもそれとなく聞いたが、不審なメールなどはないという。
三人で話し合ってT男には黙っていることにした。仕事上はタフなT男だって、こんなもの部下に流されたらショックを受けるに決まっている。なにしろ新婚なのだ。
T男の上の管理職に直接報告することにした。
次は備品のノートパソコンがなくなった。外に出してはならない情報も入っているので、会社ぐるみで対応することになった。表だって管理責任を問われたわけではなかったが、そのパソコンを使っていたN男はとても落ち込んでいた。
私とN男、S男の三人がそれを受け取っていた。M子にもそれとなく聞いたが、不審なメールなどはないという。
三人で話し合ってT男には黙っていることにした。仕事上はタフなT男だって、こんなもの部下に流されたらショックを受けるに決まっている。なにしろ新婚なのだ。
T男の上の管理職に直接報告することにした。
次は備品のノートパソコンがなくなった。外に出してはならない情報も入っているので、会社ぐるみで対応することになった。表だって管理責任を問われたわけではなかったが、そのパソコンを使っていたN男はとても落ち込んでいた。
19: 恋人は名無しさん 2007/11/20(火) 00:08:38 ID:4DKzhbUg0
それから間もなく、私たちが夜まで仕事に追われていると、守衛さんから電話が入った。
「T男さんの奥様が緊急のご用件だとのことでお連れしました」
その時同じ課に居残っていたのは私たちのチームのみ。アシスタントは基本的に九時五時の勤務だから、部屋にはT男、N男、S男、私の四人。
なぜ携帯にかけなかったのかといぶかりながら、たしかに奥さんであることを確認し、T男が対応しようと扉を開けた。
奥さんはT男をかわしてするりと中に入り、私のほうにまっすぐ歩いてきて、にっこり笑った。
「私子さんですね。この男の本性を教えてくださって助かりました。私はこの人とは離婚しますから、どうぞあとはお好きにしてください」
「はい?」
一同ぽかーんとして、妙な間が空いた。Tが唖然とした声で言った。
「何を言っているんだ。勘違いしているみたいだから、外で話そう」
「T男さんの奥様が緊急のご用件だとのことでお連れしました」
その時同じ課に居残っていたのは私たちのチームのみ。アシスタントは基本的に九時五時の勤務だから、部屋にはT男、N男、S男、私の四人。
なぜ携帯にかけなかったのかといぶかりながら、たしかに奥さんであることを確認し、T男が対応しようと扉を開けた。
奥さんはT男をかわしてするりと中に入り、私のほうにまっすぐ歩いてきて、にっこり笑った。
「私子さんですね。この男の本性を教えてくださって助かりました。私はこの人とは離婚しますから、どうぞあとはお好きにしてください」
「はい?」
一同ぽかーんとして、妙な間が空いた。Tが唖然とした声で言った。
「何を言っているんだ。勘違いしているみたいだから、外で話そう」
20: 恋人は名無しさん 2007/11/20(火) 00:09:55 ID:4DKzhbUg0
奥さんが机の上のものをなぎ払った。
文房具が散らばり、コーヒーカップが床に落ちた。奥さんはそのまま手近にあったフォルダを無表情のままT男に向かって投げた。ゴスッと鈍い音がした。
「勘違い?あなたが×××で××××な変態だなんて、本当の浮気相手じゃなかったらわかりっこないでしょうが!」
いかにもキャリア風の落ち着いた奥さんの口から出たとは思えない台詞に私たちは凍りつき、ついで、なんだか納得した。
あの中傷メールの内容は事実だったんだ...。
それから、私ははっとしてN男を見た。N男は怒りと軽蔑のまなざしで私を見ていた。
「違う、私違う、違います、私じゃありません!」
私は叫び、N男はかすれた声で呟いた。
「なるほどね。とんでもない女だったわけだ」
私はN男に弁解しようと近づき、N男は「触るな」と怒鳴り、奥さんはなぜか大笑いし、T男はそれを止めようとし、S男はその場でフリーズしていた。
文房具が散らばり、コーヒーカップが床に落ちた。奥さんはそのまま手近にあったフォルダを無表情のままT男に向かって投げた。ゴスッと鈍い音がした。
「勘違い?あなたが×××で××××な変態だなんて、本当の浮気相手じゃなかったらわかりっこないでしょうが!」
いかにもキャリア風の落ち着いた奥さんの口から出たとは思えない台詞に私たちは凍りつき、ついで、なんだか納得した。
あの中傷メールの内容は事実だったんだ...。
それから、私ははっとしてN男を見た。N男は怒りと軽蔑のまなざしで私を見ていた。
「違う、私違う、違います、私じゃありません!」
私は叫び、N男はかすれた声で呟いた。
「なるほどね。とんでもない女だったわけだ」
私はN男に弁解しようと近づき、N男は「触るな」と怒鳴り、奥さんはなぜか大笑いし、T男はそれを止めようとし、S男はその場でフリーズしていた。
22: 恋人は名無しさん 2007/11/20(火) 00:11:27 ID:4DKzhbUg0
私たちは全員で近くのファミレスに行き、話を整理することにした。奥さんもどうやら途中で何かがおかしいことに気づいたようで、冷静になってくれた。
奥さんの言い分は以下の通り。
私子を名乗る人からワープロ打ちの手紙が三度にわたって届いた。内容は職場で夫と浮気しているというもの。
T男についての記述や、デートしたと書いてある日に実際ことごとく帰宅が遅かったことからその信憑性を判断し、相手の顔をひと目みてから離婚しようと思った。
T男がちかごろ急に「仕事が忙しくなった」と言ってしょっちゅう午前様であること、「職種の違う奥さんよりも苦労をわかちあえる私子がT男にはふさわしい。おなかに彼の子どもがいる」という内容に傷つき、キレてしまった。
奥さんの言い分は以下の通り。
私子を名乗る人からワープロ打ちの手紙が三度にわたって届いた。内容は職場で夫と浮気しているというもの。
T男についての記述や、デートしたと書いてある日に実際ことごとく帰宅が遅かったことからその信憑性を判断し、相手の顔をひと目みてから離婚しようと思った。
T男がちかごろ急に「仕事が忙しくなった」と言ってしょっちゅう午前様であること、「職種の違う奥さんよりも苦労をわかちあえる私子がT男にはふさわしい。おなかに彼の子どもがいる」という内容に傷つき、キレてしまった。
24: 恋人は名無しさん 2007/11/20(火) 00:12:55 ID:v1dHh1zY0
ちょ、N男……
なんか知らんがN男にすげー嫌悪感抱いてしまったんだが
なんか知らんがN男にすげー嫌悪感抱いてしまったんだが
25: sage 2007/11/20(火) 00:13:22 ID:km1VjIDiO
4円
26: 恋人は名無しさん 2007/11/20(火) 00:13:40 ID:4DKzhbUg0
T男の言い分は以下の通り。
私子とはもちろん、誰とも浮気の事実はない。
遅くなると言った日は本当に仕事をしていた
(N男、S男、私がそれぞれスケジュール帳などを見せて証言)。
自分に関する記述はおそらく過去につきあった女性が情報源だろう。そんなことは調べようと思えば調べられるものだ。手の込んだ嫌がらせに違いない。
N男の言い分は以下の通り。
実は、T男中傷メールと同時に、自分のところには私子の中傷メールも届いていた。私子を傷つけたくなくて黙っていた。どうせ誰かのいたずらだろうと思った。でもほんの少し疑ったことも事実。今日の奥さん突撃でそれが裏付けられたと思った。
私子とはもちろん、誰とも浮気の事実はない。
遅くなると言った日は本当に仕事をしていた
(N男、S男、私がそれぞれスケジュール帳などを見せて証言)。
自分に関する記述はおそらく過去につきあった女性が情報源だろう。そんなことは調べようと思えば調べられるものだ。手の込んだ嫌がらせに違いない。
N男の言い分は以下の通り。
実は、T男中傷メールと同時に、自分のところには私子の中傷メールも届いていた。私子を傷つけたくなくて黙っていた。どうせ誰かのいたずらだろうと思った。でもほんの少し疑ったことも事実。今日の奥さん突撃でそれが裏付けられたと思った。
27: 恋人は名無しさん 2007/11/20(火) 00:14:54 ID:4DKzhbUg0
私ももちろん「T男とは何もない」と弁解をし、内緒でN男とつきあっていたことをT男に詫びた。
T男は「うん、なんとなくわかってたよ。でも仕事はちゃんとしてくれてたから。ふたりのことはほんとに頼りにしてるんだ」と言って、ちょっと席を外した。
奥さんがぽつんと「あの人きっと泣いてるんですよ」と言った。T男が泣くところなんて想像もつかなかったけれど。
S男は血の気の失せた顔で呆然としていた。こういう修羅場に耐えられる人じゃなくて、ショック状態なんだろうと思っていた。その時には。
T男は「うん、なんとなくわかってたよ。でも仕事はちゃんとしてくれてたから。ふたりのことはほんとに頼りにしてるんだ」と言って、ちょっと席を外した。
奥さんがぽつんと「あの人きっと泣いてるんですよ」と言った。T男が泣くところなんて想像もつかなかったけれど。
S男は血の気の失せた顔で呆然としていた。こういう修羅場に耐えられる人じゃなくて、ショック状態なんだろうと思っていた。その時には。
32: 恋人は名無しさん 2007/11/20(火) 00:16:34 ID:4DKzhbUg0
その後のT男の行動は素早かった。「自分に関するきわめてプライベートな事実と、細かい勤務時間を知っている」という条件から犯人を割り出し、尋問。自白させた。
犯人はM子だった。
M子はS男とつきあっていたのだそうだ。しかも独身の頃に、やはり結婚前だったT男ともつきあっていたという。
そりゃ、T男も速攻で思い当たっただろう。S男が修羅場の夜のファミレスで呆然としていたのは、M子犯人説に思い当たったからだったのだ。
犯人はM子だった。
M子はS男とつきあっていたのだそうだ。しかも独身の頃に、やはり結婚前だったT男ともつきあっていたという。
そりゃ、T男も速攻で思い当たっただろう。S男が修羅場の夜のファミレスで呆然としていたのは、M子犯人説に思い当たったからだったのだ。