現在の俺のスペック
19歳 ニート
当時の俺15歳 中学3年生
俺が住んでいる地域は、宗教と暴力団の町と呼ばれるほど、宗教団体と暴力団の建物がたくさんある地域だ。
田舎だから、土地代が安いらしくそういう人が集まるらしい。
当時の俺はエアガンにハマっていた。だが、10歳以上のエアガンの威力に飽きた俺は、同じくエアガン好きの父親を言葉巧みに騙し、18歳以上のエアガンを購入した。
買ったのはコルト ガバメントというエアガンだ。
買った時はまさかこのエアガンのせいであの事件が起こるとは思いもしなかった。
ある日学校の帰りのHRで、先生が真剣な顔で話し始めた。
「近々○○(地名)周辺で、暴力団の抗争が起こるかもしれないということだ。みんなしばらくの間外出を控えるように。」
といった話だった。
「俺の後ろの家○○組の人だぜーwwww」
とか
「俺○○組の人と話したことあるぜーwwww意外に優しいんだぜーwwww」
とか、クラスがざわめき色々な話が聞こえてくる。
しかし俺は震えていた。
ヤクザの抗争なんて、つまり銃撃戦ってことなのか?もしかしたら流れ弾が当たるかもしれないのか?
色々な事が頭をよぎった。そして俺は決意した。
『ヤクザをエアガンで狙撃しよう』
好奇心旺盛で無駄に行動力のある俺は早速、少ない小遣いで武器を調達することにした。
おもちゃ屋に行き、1500円のキャットナックルというメリケンを購入。
そして駄菓子屋にて、煙玉を大人買いした。
火をつけると青っぽい煙の出る玉だ。
友達には内緒で俺はこの計画を練っていった。もちろん家族にもだ。
周りの人を危険な目にさらしたくなかった。
そして0.25gのバイオBB弾を購入。外で撃つことになるのでと思い、土に還るバイオBB弾にした。我ながら環境に優しい子だと思った。
俺の考えた作戦はこうだ。
まずヤクザの家の近くのアパートを探す。そのアパートの階段に潜伏。
↓
車や玄関から出てきたヤクザをエアガンで狙撃
↓
状況に応じて煙玉やメリケンを使用
完璧だった。本当に自分がプロの殺し屋になったような感覚でワクワクしていた。
そして次の日、俺は作戦を実行することにした。
当時の俺は2軒しかヤクザの家を知らなかった。
1軒は庭にヤシの木や滝があるような家で、近所では有名なヤクザの家だった。
もう1軒も、めちゃくちゃデカい家だった。
いつも黒い高級車が沢山止まっていて、警察が押し入ったこともある有名なヤクザの家だった。
そして俺は、ヤシの木の家のヤクザを狙撃することにした。
ちょうど向かい側にアパートがあったからだ。
早速俺はアパートの階段の1番上に行く。3階建てだったので、こちら側からは見やすく、向こうからは見にくいという絶好の狙撃ポイントだった。
時間は夕方。ヤクザの家の駐車場を見ると、2台分空いていたので、ちょうど外出中のようだった。
ドキドキしながらマガジンに弾を詰め込み、ヤクザの帰宅を待つ俺。
時折アパートの人が来ると、エアガンを隠し階段から景色を眺める少年のフリをした。
アパートの人達は、まさか俺が今からヤクザをエアガンで狙撃するなど想像できなかっただろう。
3時間くらいヤクザを待ち、今日は来ないからやめようかどうか迷っていた時だった。
来た。
黒のジャガーが1台、駐車場にバックで駐車しようとしているのだ。
俺は最高にドキドキしていた。今からあいつらをエアガンで撃つのかと思うと、ニヤニヤが止まらなかった。
そして俺は、威嚇射撃ということで車に向かい3発ほど撃ち込む。
パンッ!パンッ!パンッ!と乾いた音が鳴り響く。
アパートだったせいか、想像以上に音が響きテンパった。
BB弾は全てヤクザの車ボンネットに命中。
降りて来たヤクザが、ボンネットの傷を確認するように手で擦りながらキョロキョロしていた。
俺はそれを見つつ、「ふほおおおおおおお!」と喜びぴょんぴょん跳ねていた。
3人ほど車から降りてきて、ボンネットの周りで何やら話している。
そして3人でキョロキョロして、そのうち1人がこのアパートを指を差した。
慌てて階段の陰に隠れる俺。そしてエアガンをリュックに詰め、アパートから逃げ出すことにした。
駐輪場に停めてあった自転車に乗り、あえてヤクザの家の前を通って帰ることにした。
困ったような顔をするヤクザの横を、ニヤニヤしながら自転車で猛スピードで通り抜けた。
この時に俺は、ヤクザをエアガンで狙撃する快感を覚えてしまう。
翌日、学校が終わると俺はすぐに帰宅しエアガンを持ち、またヤクザの家の前のアパートに行った。
昨日の経験を活かし、今度は車ではやくヤクザ本体を撃つ事を考える。
20mほど距離があったので、威力はさほど無いと考え、顔を狙うことを思いつく。
そしてまた階段の1番上に行き、階段の壁からヤクザの家を観察する。
顔を狙うとなると、一発で当てるのは難しいと思い、俺は前から持っていたウージーというサブマシンガンで狙う事にした。
ウージーは昨日のガバメントより威力は劣るものの、一度に沢山弾がでるからだ。
そして俺はウージーを持ちドキドキしながらヤクザを待つ。
すると、ヤクザの家の玄関が開く。
何やら女の人が数人いて、談笑しているようだった。
俺はとりあえず、威嚇射撃としてガバメントで一発玄関に撃ち込んだ。
パンッ!と音が鳴り響き、玄関から女性が2人ほど外に出てきて、キョロキョロ周りを見渡している。
「当たった!」と小さく声を出しガッツポーズをし、階段の壁から目だけを覗かせ様子を見る。
女の人2人は、何があったかわからない様子で、また家の中に入っていった。
しかし今度は男の人が1人出てきた。
黒のスーツをきたイカつい男性だった。絵に描いたようなヤクザだった。
そしてそのヤクザがしゃがみこみ、何かを拾った。
俺の撃ったBB弾だった。
これは予想外だった。まさか犯行2日目で自分の武器がバレるとは思っていなかった。
そしてヤクザはBB弾をポケットに入れて、玄関に戻ろうとする。
何を思ったのか、俺はすかさずウージーを取り出し、ヤクザの後頭部めがけて発砲した。
タタタタタタタタタタタタタ!
と数十発のBB弾が発射され、いくつかは足や背中に当たったが、数発頭にも当たったように見えた。
俺の心臓の鼓動は、聞いた事ないくらいドキドキしていた。
思わずそこにしゃがみこみ、自分のしたことの大きさに気づく。
すると外から男性の叫ぶ声がした。
「オーイッ!オーイッ!」とヤクザが叫んでいるようだった。
俺は今外に出たら、マジモノの銃で狙撃されると思い、数十分その場にしゃがみこんでいた。
リュックにエアガンを詰め、そーっと駐輪場に向かい自転車に乗り、今度はヤクザの家の前を避けて帰宅した。
俺は家に帰り、冷静になって考えてみた。自分はなんということをしてしまったのだろうと。
だが同時に、達成感がわいてきた。ヤクザに一方的に狙撃するなんて、なんてカッコいいんだと。まるで本物のスパイのようだと。
俺はその日活躍したガバメントとウージーをニヤニヤしながらウエットティッシュで拭き、その日は寝た。
しかし次の日、学校の帰りのHRでまた先生から注意の話があった
「最近うちの制服を着た生徒が、○○というアパートの階段からおもちゃの鉄砲で歩行者を撃つというイタズラをしていると、アパートの方から通報があった。何か知ってるヤツがいたら先生に教えるように」
ということだった。完全に俺のことだった。
制服でバレるというのは盲点だった。そして、狙撃しているのを見られているとは思わなかった。
その日は帰宅し、ヤクザを狙撃しに行くことなく、エアガンのカタログを読みながら作戦を練り直していた。
せっかく買ったメリケンと煙玉は、新品未開封のままだった。どうにかしてコレを使いたいと考え、次の日の放課後、新しい作戦を実行する。
俺の考えた作戦はこうだった。ヤクザの敷地内に煙玉を投げ込み、煙であぶり出されたヤクザをエアガンで狙撃。
俺は早速放課後に家に帰り、エアガンと煙玉、ライターをリュックに詰め込みヤクザの家に向かった。
今度は反省を活かし、周りをキョロキョロしながら人がいないのを確認することにした。
しかし夕方だからか意外に一般人が多く、なかなか煙玉を敷地内に投げ込むことができなかった。
しかし根気強く待っていると、周りに一般人がいなくなった。
チャンス!と思い慌てて煙玉を取り出す。そしてもう一回周りを確認し、煙玉に着火。
3つほどヤクザの家の庭に投げ込み、急いでチャリに飛び乗りアパートへ向かう。
俺はニヤニヤとドキドキが止まらなかった。
アパートの階段から様子を伺うと、青い煙がうっすらと見えた。所詮駄菓子屋の煙玉なので、そんなに煙は出ていなかった。
そしてヤクザも出て来なかった。その日はヤクザを狙撃することなく、帰宅した。
しかし次の日、思いもしない展開になった。