去年の正月1通の年賀状が来た。
その年賀状には可愛い文字でこう書かれていた。
「明けましておめでとうございます。来年悟くんと結婚します。」
この年賀状の差出人は俺の元カノまりあだ。
まりあとの出会いは俺が憧れの1人暮らしを始めたころに遡る。
まりあは俺が住むマンションの隣人だった。
このスレは、俺が人生で初めて付き合ったまりあとのお話です。
チラ裏だが少しの間付き合って下さい。
第1章 おふくろとの別れ
3年前の春。超が付くほどの4流大学を卒業した俺は就職のために1人暮らしを始めた。
ずっと憧れていた1人暮らし。
物件選びのため不動産屋に行くのすらワクワクする。
何件かの不動産屋を廻り
やっと家賃と自分の希望に見合った部屋を見つけた。
間取りは1DKで居住空間は10帖。
まずまずの広さだ。
外観も内装も手入れを入れたばかりとかで小奇麗にできている。
部屋が決まったその週末には引越しで実家を出た。
苦労を掛けたおふくろとの別れ・・・。
中・高とグレた俺はおふくろにいつも心配を掛けていた。
中学で親父が他界。
それからはおふくろが女手一つで俺を育ててくれた。
そんなおふくろの苦労も知らずに、家の貧しさから俺はグレた。
学校や警察から呼び出しをくらうのは日常茶飯事。
その度におふくろは昼夜を問わず俺を迎えに来てくれた。
そして涙を浮かべながら、必死に頭を下げてくれた。
帰り道、おふくろと並んで歩く・・・。
そしておふくろはいつもこの台詞を言う。
「貧乏でごめんね・・・」
引越し業者が俺の荷物を積み込んでくれた。
俺も車に同乗させてもらうことにした。
玄関を出る時俺はおふくろに言った。
「じゃ行ってくるね!体に気をつけてね・・・」
おふくろは昔の様に目に涙をためて俺の手を握った。
そして「これを持って行きなさい」と言って茶封筒を握らせた。
いや。親父亡くしたのは中1
半年後には既にタバコ吸って
そこから高校までは結構悪質なグレ方をした
おふくろに見送られて俺は車に乗り込んだ。
「今度この家に帰ってくるのはいつだろう?」自分の育った家を眺めてそう思った。
茶封筒の中身を見た。
そこには1枚のメモと10万円が入っていた。
貧しい母に苦しい捻出だったに違いない。
申し訳ない気持ちと有り難い気持ちが交錯する。
メモ書きを見た。そこには・・・。
「元気でいてくださいね。お野菜はちゃんと食べてくださいね。あなたはいつまでも
母さんの子供です。」と書いてあった。
引越し業者にバレずに、声を押し殺して泣くのは大変だった。
第2章 まりあとの出会い
「二宮光輝」
俺は郵便受けと部屋のネームプレートに出来るだけ丁寧な字でそう書いた。
こういうことはキチンとしたい。
新しい暮らしを始めるにあたって、俺はそれを1番にすることに決めていた。
マンションの玄関に行って郵便受けにプレートを入れる。
そして部屋に戻ってプレートをはめる。
これでよし。新た人生の始まりだ!
悪質なグレ方ってやっぱりトッポの先までチョコが入ってなくてキレたりとかそういうの?
あんまり大きな声では言えないけど
ケンカに刃物は使ってた。
あの時は何考えていたんだろう
待て待て。それは本名か?
似てるけど偽名です
引越し業者が運んでくれた荷物を丁寧に分ける。
これは今日1日で終わらないかもしれない・・・。
そう思いながらも地道に部屋作りに取り組む。
気が付くと夕方になっていた。
そうそう大事なことを忘れていた。
ご近所に挨拶をしなければ。
家を出る数日前。俺が引越しの荷造りをしているとおふくろが
「これをご近所さんにお渡ししてね」
と言って丁寧に包装された箱を2つ持ってきた。
中身はバスタオルと石鹸のセットだった。
俺は今どきご近所廻りなんてするかな?そう思いつつもそれを受け取った。
別にして損することでもないし、こういうことは「年の功」があるおふくろの
言う通りにしておこう。
荷物整理の手を止め両隣の部屋へ挨拶に向かう。
このフロアは4部屋。
俺の部屋は303号室。まずは301号室に行った。
2度ほどインターホンを押したが反応無し。
留守なのか・・・。
今度は隣の302号室へ。
インターホンを押してみる。しばらく待つ・・・ここも反応無し。
もう1度押して出て来なかったら日を改めよう
そう思った矢先。
インターホンのマイクから「ガチャ」っという音がした。
続けて「はい」という声。
若い女だなと分かる。
「あの、今日から隣に越してきた二宮と申します。引っ越しのご挨拶に参りました」
そうインターホンに向かって言うと、ガチャリとドアが開いた。
第一印象で年下だなと思った。
どうやら部屋でくつろいでいたらしく、化粧はしていなかった。
それでもどことなく整った顔をしているのがわかる。
一応コテにしとく
「今日隣に越してきた二宮です。引越しのご挨拶に伺いました」
女性は慌てた様子で
「すみません。すぐに出ます」と答える。
別に慌てなくていいのにな・・・。
そんなことを思いながらドアの前で待っていた。
1分程度待つとドアがガチャリと開いた。
なぜか半開き・・・。チェーンから覗いているのに気づく。
女性はこちらの顔を伺いながら「はい」と言った。
>>28
wwwすごいなお前。一行目なんかそのままじゃん。
お前続き書くか?
そうか。女性はこれくらい用心しなきゃいけないよな。
物騒な世の中だもん。
「向かいに越してきた二宮です。引越しのご挨拶です。これどうぞ」
俺は母親が用意してくれた箱を出した。
女性は一旦ドアを閉めチェーンを解除してドアを開いた。
「わざわざありがとうございます」
この時女性の全身が初めて見えた。
ドキッとした。可愛かった・・・。正直言って好みのタイプだった。
小さくて少し丸い顔。大きな目。髪は黒くてショート。
身長は小柄だがトレーナーでも分かるほどの巨乳。年齢は20歳前後だと思う。
俺は少し緊張した。
「これつまらない物ですが・・・・」改めて箱を彼女に差し出した。
「どうもすみません」女性は箱を受け取ってニコッと笑った。
やっぱり可愛い。
女性は
「私は引越しのご挨拶しなかったな。でもちゃんとするべきですよね」
意外にも話掛けてきた。
不意を突かれた会話に少し戸惑いながら
「僕も母親が持たせたものだから・・・」
そういって「これからも宜しくお願いします」で締めくくった。
女性と話すことは出来るが、好みのタイプと話すのは少し緊張する。
彼女は「なにか分からないことがあったら、気軽に聞いて下さいね」
そんな優しい言葉を掛けてくれた。
俺は失礼しますと言って302号室のドアを閉めた。
名前を聞くのを忘れていた。
改めて302号の表札を見た。
しかし名前は無かった。女の1人暮らしがバレないための用心なのか?
304号は空室のはずだ。物件案内の時に不動産屋がそう言っていた。
挨拶の必要はない。
部屋に戻ってって少しウキウキした。
あんな可愛い子がお隣さんだなんて。
でもあんまり慣れ慣れしくするのはよしておこう。
変態と思われても住みにくくなる。
廊下で会った時に挨拶する程度がいいな。
俺は挨拶廻りのあと少し部屋を片付け近所のスーパーへ買い物に行った。
初めての1人暮らしだ。
これからは自分で食事も作らなければいけない。
夕飯のメニューはカレーにした。
今はこんなものしか作れない。
でも料理初心者の俺は妙にワクワクしていた。
「美味いカレーを作ってやる!!」
子供の頃から料理番組を見るのは好きだった。
料理の知識も多少なりともあると思っていた。
人参・玉ねぎ・じゃがいも・牛肉・牛脂(無料)・牛乳・マッシュルーム・二段熟カレー(辛口)
を買って帰る。
部屋にキーを差し込むのがなんとも良い。
自分の部屋なんだぁ。ここは。
俺も大人の男になったもんだ・・・。
しみじみとそう感じた。
初めての料理は散々だった。
まず玉ねぎの切り方が分からなかった。
真ん中で半分に切ったまでは良かった。
その半分を繊維に沿って切るのか?はたまた逆か?
適当に切ってみた。目が痛く涙が出た。
それでもカレーなんて適当にやれば出来るだろ!?
甘かった。水の分量を間違えたのか
妙にバシャバシャの水カレーになってしまった。
ご飯も水が多すぎた。
カレーと合わさるとなんとも締まらない味の食い物になった。
それを1人で背中を丸めて食った。
TVはまだ付いていない。
1人の静かな食事・・・。
お袋の笑顔を思い出した。
少し寂しい気分が襲ってきた。
その時インターホンが鳴った。
妙に大きな音なのでビクッとする。
「お客さんだ!でも誰だ??」
なぜか焦ってドアまで行った。
ちゃんとドアホンも付いているのに・・・。
無防備にドアを開けた。
そこに立っていたのはオタクの男だった。
こいつも20歳くらいか?
ちょいピザで髪は妙にベタとしている。
肌も油ぎっていた。
でかいメガネを掛けているのだが、それが少し曇っている。
背も低い160cmあるかないか??
「誰だ?コイツは?」心の中でそう思った瞬間。
「301号の油田ですが・・・」
そいつはボソリとそう言った。
「ああ・・・」
そういえば買い物に出かける時に留守だった
301号のドアポストにメモ書きを入れたっけ。
「303号室に引っ越してきた二宮です。
改めてご挨拶に伺います」
大体こんな内容だった。
俺は「ちょっと待ってて下さい」と言って一旦部屋に入り
おふくろが用意してくれた
バスタオルと石鹸のセットを取ってきた。
それを油田に渡し「よろしくお願いします」と言った。
油田は「はぁ・・・どうも」と言ってそれを受け取り
301号へと戻っていった。
若い奴が多いな。このフロアは。
そんなことを考えながらまた不味いカレーを頬張っていた。
しばらくすると
ピンポーンとまたインターホンが鳴った。
「誰だよ!また油田か?」
面倒くさいなぁと思いつつ今度はドアホンで応答した。
受話器から若い女の声がした。
「新田です。」
新田?誰だ?
「隣の新田です」
隣のあの可愛い子だ!心臓がバクバクする。
あの子は新田という名前なんだ!
俺は慌てた様子を悟られないように「少し待って下さい」と言って
受話器を置いた。
あの子が一体なんの用なんだ?
読んでないが
いや。間違いない
色々考えつつドアを開けた。
新田さんはニコリと笑いながら
「これカレーです。引越し初日で大変でしょ?温めて食べて下さい」
そう言ってカレーが入ったビニールケースを手渡してきた。
俺は驚いた。
こんなご近所付き合いが本当にあるんだ・・・。
田舎の方ではありそうな話だが
人間関係が希薄になったといわれる現代社会において
ましてやこんな若い子がそんな文化を継承しているとは。
新田さんは「あの・・・。ご飯ありますか?」と聞いてきた。
俺はこれ以上迷惑を掛けてはいけないと思い。
「あります。大丈夫です」と答えた。
新田さんは「容器はドアの前に置いておいて下さい」と言うと
部屋へ戻っていった。
俺は早速そのカレーを食べた。
新田さんのカレーは美味しかった。
俺のカレーとは比べ物にならなかった。
適度にトロみもあった。
食後、俺は近所のコンビニで飲み物の買出しに出た。
そこで運命の再会をした。
この再会が俺の1人暮らしライフを一変させる。
これ何時くらいに終わる予定?
俺自信もよく分からなくて
あれは田舎から都会
俺はまぁまぁ都会からまぁまぁ田舎