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浮気がバレて居直りさっさと緑の紙に署名した嫁。が、まさか本気で離婚されるとは思ってもいなかったらしいw 俺に離婚届を提出され、そこで初めて事の重大さを知ってももう遅いわw
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67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:39:09.06 ID:4QDc0c6v0
最後の授業は中学校の準備講座だった。
文字と式辺りまでをサクサクと終わらせていつもの雑談。
「せんせ、わたし、きょうてじゅくやめるの」
珍しく雑談で言葉を発してきた。
「知っているよ。中学校でも元気で頑張ってな」
俺はいつものようにノートに書き込む。
「せんせはまたいるの?」
「いるよー。たまには顔出してな」
またノートに。
「せんせ!」
なんか声が尖ってる。

 

72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:41:16.54 ID:4QDc0c6v0
ついつい「どうした?」って言葉を発する。
「いま、しゃべってるの」
ああ、なるほど。
彼女が読唇術を少し身につけていることを知っていた。
俺は口を大きく開けてゆっくりと会話をした。
「ごめんね」
「せんせ、わたしのじゅぎょたいへんたったてしょ?」
「ぜんぜん」
「めいわくをかけてごめんなさい」
「馬鹿wなんで○○ちゃんが謝るんだよ」
突拍子もないこと言うから早口になってしまった。
(関係ない話だけど早口は当然理解しにくい。それに区切りすぎるのも良くない。
大きく口を開けて。なるべく短い文で話すのがよろし)

 

73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:42:24.39 ID:4QDc0c6v0
彼女の表情は???ってなった。
「あやまらないで」
「うん」
彼女が席を立つ。
出口で彼女が口を開ける。
「せんせ、つくえのなかみてね」
周囲の視線が気になった。
いつもそうだったんだが、彼女の独特な喋り方は他の生徒、講師からの好奇な目を浴びてしまう。こっちみてねーで授業に集中しろ!と毎度毎度思っていた。
「わすれもの?」
彼女は首を振る。
俺はおkサインを出して彼女を見送った。
その日は彼女の授業で最後だったので机の掃除をしながら引き出しの中を覗く。
そこには二つ折りになった紙が入っていた。

 

76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:43:59.60 ID:4QDc0c6v0
「俺先生~、○○ちゃんが呼んでる」
教室長に呼ばれた。
俺は紙をポケットに入れて出口に行くと彼女が立っていた。
その後ろには彼女の母親も立っていた。
母親に会釈をして彼女の顔を見る。
「どうした?」
「しゃしん」
今ではあまり手にすることのない使い捨てカメラを手にしていた。
「ん?」
「いっしょにとって」
顔を赤らめて言う彼女。ませてるなーなんて思いながらも快諾。
教室長にツーショットを撮ってもらった。

 

78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:45:32.34 ID:4QDc0c6v0
「娘がお世話になりました」
深々と挨拶をする母親。
「いえいえ、僕も楽しかったです」
「ありがとうございました」
もう一度頭を下げると母親は彼女を連れて帰っていった。
彼女が車に乗り込み、見えなくなるまで俺は手を振った。
んで戻って帰宅。
家に帰ってスーツをハンガーに掛けていた時に例の紙の事を思い出した。
ポケットを探り取り出す。
開くとそこには彼女の綺麗な字で
『一年間ありがとうございました。先生の授業とても楽しかったです』
と書かれていた。
可愛らしい絵も添えられていた。
彼女は絵が得意だった。よくノートに書いていたよ。
俺はその紙を閉じて財布に入れた。
そして冷蔵庫からビールを取り出す。
その日のビールは少ししょっぱかった気がするんだぜw

 

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:46:50.65 ID:4QDc0c6v0
大学二年生になるとやたらサークルが忙しくなった。
バイト代も貯まってたし、その頃から始めたスロットも調子が良くバイトに入らなくなっていた。
んで久しぶりに塾に行くと教室長が
「この前○○ちゃん(彼女)が君に会いにきてたよ」
5月の中旬だったね。
「そうなんすか?なんか用でした?」
「これ置いていった」
封筒みたいなものを手渡された。
中身を見ると最後の日に撮った写真の焼き増しだった。
俺の顔キモw今でもスキャンして撮ってあるがマジできもいw
そして一枚の紙。
『携帯買ったのでメールしましょう』
ってアドレスを添えて書かれていた。

 

83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:49:10.71 ID:4QDc0c6v0
なんだそれwと思いながらも封筒をしまいその日は授業をこなした。
帰宅後思い出したかのように彼女からもらった紙を見た。
そして携帯を手に取る。
アドレスを打ち込む。
本文入力。
でも送信ボタンは押さなかった。
なにかいけないことをやっているんじゃないかという衝動に駆られたんだな。
中学生にメールなんてって思った。
万が一トチ狂って犯罪チックな展開になったらどうすると思い結局メールは送らなかった。
そしてそれ以降彼女が塾に来ることはなかった。
もちろんアドレスの紙もどこかに消えていた。

 

87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:52:17.07 ID:4QDc0c6v0
月日は流れて大学四年生。
単位も残り4単位、そして就職も無事に決まりフラフラしてた。
そこ頃、大学のサークルの一年後輩の子とも付き合っていた。
どちらが告白したとか、きっかけなんかも今となっては思い出せないほどのなんとなくま付き合い。
でも俺にとっては初めての彼女であり。
初めてのデートであり。初めてのキスであり。初めてのセクロスだった。
正直期待以下だったなと思う。
なんだかなー。
たぶんよっぽどの事がなければこの子と結婚するんだろうか、もし振られたら一生独身かもな。
当時はそんな感じで焦燥感に駆られていた。
その頃になるとバイトも再開。
結局塾講師しかバイトしてなかったなぁ、なんて。
なんだか無味乾燥な大学生活だったなと思っていたよ。
そんな感じで大学生活は終了した。

 

88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:54:04.04 ID:4QDc0c6v0
社会人生活一年目。だいぶ慣れた(仕事的には、でも既に辞めたかった)頃、夏の日。
会社の同僚と上司と飲んだ帰り。
いつもの最寄駅のホームで酔い覚ましにとペットボトルの水を飲んでいた。
なんか上司の愚痴、説教が多い飲みの席だったので俺の気分は悪く家に帰っても一人なのでなんとなくそこにいた。
今ではその上司に感謝している。
その時、そこにいなければ彼女と再会はしていなかったかもしれないからね。
突然後ろから声が掛かった。
「せんせ」
振り返ると学生が一人。
すぐに彼女だということは分からなかった。
「おぼえてる?」
たどたどしい喋り。ようやく気づく。
変わらず地味な子ではあったが三年の月日が彼女を大人にした。
制服にも新鮮さを覚えた。
考えてみれば高校生の歳になったのか。
小学生のあの子がな・・。完全にオサーンだったw

 

91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 14:58:47.28 ID:4QDc0c6v0
「○○ちゃんか?」
彼女は笑って頷いた。
そしてノートを取り出すと「暗いから筆談で」と書いた。
おいおい、今はほって置いてくれよなんて思った。でもお構いなし・・。
「仕事の帰りですか?」
変わらず綺麗な字を書くもんだなと感心しているのもつかの間、
「お酒臭いよ」と書かれた。
そんな匂うかなと思いながら俺も自分のペンを取り出してノートに書き込む。
「社会に出れば分かる」
「体は大事にしないと」
「言うようになったね」
久しぶりの筆談だった。
パソコンばかり打っていたので文字を書くのも久しぶりだった。

 

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:00:43.31 ID:4QDc0c6v0
「それにしても久しぶりだね」
「そうだね」
「でも高校生がこんな遅くに出歩いてていいのかよ」
「遅いってまだ九時だよ」
「十分遅い」
「友達と遊んでたの」
「夜遊びも程ほどにな」
「厳しいよ、先生」
「でも元気そうで何より」
「元気じゃないよ」
「どうして?」
「先生がずっとメールくれなかったから」
彼女の顔を見る。悪戯に笑っていた。

 

97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:01:28.03 ID:4QDc0c6v0
ああ、あの時のことか・・。
「あの紙なくしちゃったんだよ」
バレバレの嘘。文字も焦っていた。
「じゃあ、今日は教えて」
そう書くと彼女は携帯を取り出した。俺は参ったと言わんばかりに携帯を取り出す。そしてお互いに交換する。
当時はいい年こいてアドレスに付き合っていた彼女の名前を入れていたんだが、案の定彼女に突っ込まれた。
「彼女さんの名前?」
「そうだよ」
「先生モテるね」
「どこがだよw」
「私は彼氏の一人も出来ないよ」
「意外と可愛いのに」
ちょっと調子に乗って意地悪を言う。

 

98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:02:33.97 ID:4QDc0c6v0
「じゃあ先生が振られたら彼女にして」
え?俺は思わず彼女を見た。
彼女はペンで何かを書く。
「冗談だよ」
「からかうのはやめろw」
そして彼女はノートを閉まって携帯を指差す。
ボタンを押す仕草。
「わかってるよ」
俺はベンチから腰を上げて彼女と一緒に歩き出し改札を出た。
そして急に立ち止まってバッグを漁ると懐かしいリンツのチョコを出してきた。
どんだけ好きなんだよw
と思いながらもありがたく受け取る。
口の中で溶かしながら食べるそれは口に残るアルコールの味と混ざった。

 

99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:03:23.30 ID:4QDc0c6v0
ロータリーに出向くと彼女の母親が待っていた。
うわwこんな酔っ払いの姿見せたくねぇwと思いながらも挨拶。
言葉は交わさないまま俺は帰宅した。
そしてその時は彼女にメールをした。
『勉強も頑張れよ』ってな感じのを送ったと思う。
『先生もお仕事頑張ってね』って返ってきた。
今は先生じゃねーけどなw
それから彼女とのメールのやり取りが少しずつ始まったんです。

 

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:04:44.72 ID:4QDc0c6v0
毎日がルーティンワークな社会人二年目。
大学で出来た彼女とはまだ続いていた。
でも彼女のほうがいい所に就職して俺は若干負い目を感じていた。
それに会う機会も月に一、二回。付き合っているのかって感じだったw
そんなつまらない生活に一通のメールが届いた。
ユウからだった。
数ヶ月ぶりのメール。何気なく開いてびっくり。
『この前全国のろう学校主催の絵画コンクールで金賞を貰いました』
ほうほう。すごいじゃないか。

 

104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:08:15.54 ID:4QDc0c6v0
『おめでとう』
『ご褒美下さい』
益々マセガキになりやがってwwと思った。
『高いものは買えないぞー』
『デートして』
馬鹿かwと思った。
『冗談はやめろよー』
『冗談じゃないよ。本気だよ』
『彼女いるんだぜ?』
正直それは逃げるためのいい訳だった。
付き合っていた彼女のことを思って言ったわけじゃない・・。

 

106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:09:05.80 ID:4QDc0c6v0
『そうだよね。忙しいのにごめんなさい。またメールします』
って返ってきた。
俺もだらしない男だわな。少し可哀相に思っておkの返信をした。
『嬉しい』
フラグとかそんなことは当時の俺に考える余地はなかった。
ただ元教え子と遊びに行くくらいの感覚。
『どこに行きたいの?』
『映画館に行きたい』
申し訳ないけれど耳が聞こえないのに平気なのかという疑問を当然に抱いた。
でも彼女が行きたいと行っているのだ俺がケチをつけるところではないしな。
『いいよ』
日時と集合場所を決めてその日のメールは終わった。

 

109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:11:51.10 ID:4QDc0c6v0
その日は快晴だった。
久々の休日でずっと寝ていたかったが約束を反故には出来ない。
鞭打って集合場所に向かったよ。
彼女は俺よりも先についていた。
「せんせ!」
ユウが手を振ってきた。それはまるで彼氏を待つ彼女の様子だった。
「おまたせ」
ユウは首を振る。
俺は指で「行こうか?」の合図を出す。
ユウは頷いた。
駅近くの映画館。
何を見るかは聞いていなかったが当時ヒット上映していた映画『バタフライエフェクト』だったのを覚えている。
今での好きな映画の十本には入る名作だと思う。

 

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:13:30.28 ID:4QDc0c6v0
でも当時鑑賞したときは彼女の事が気になって映画どころじゃなかったw
聞こえないのに理解できているのかなーってね。
それに補聴器をしていないし。
なんでも大きな音になると補聴器が必要以上に反応してしまって逆に不快になるのだという。
補足すると、私くらいだと補聴器の意味はほとんどない、と最近教えてもらった。
でも必死に見入っていた。
鑑賞後も「おもしろかった」と満足げだった。
字幕だけでも分かるものだなーと関心。
後に音声を消して自宅で映画を見たことがあるが・・正直楽しめなかったw
健聴者にとっては難しい作業なのかしれんw

 

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:18:39.48 ID:4QDc0c6v0
デート?中は言葉のみだけではなくジェスチャーも交えて『会話』をした。
周りの視線が最初は気になったがすぐに慣れた。
今もそうなのだが俺と彼女間で手話はあまり使わない。
それは彼女の通う学校が『聴覚口語法』を採用していたから。
一般的な手話法ではなくて精度の高い補聴器を持って耳から言葉を聴き、そして言葉で伝える手法のこと。
ろう社会では今でも賛否両論あるのだがドラマなんかで見られる手話をしながら話す(トータルコミュニケーションなんて言われているが)ことはしなかった。
とにかく音声を持ってして人とのコミュニケーションを図ろうとしていた。

 

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:20:35.33 ID:4QDc0c6v0
今は『人口内耳』なんて便利なものもあるらしい・・。
手術で埋め込むらしいのだが、ユウが失聴した頃には日本であまり普及はしておらず高額なものになるので彼女はそのオペを行わなかった。
幼少期ならばそのオペを受ければ効果は大らしい。
今は本当に便利な世の中になっているとユウは言っている。
そんな感じで『会話』をするユウに対して初めは理解に欠けて苛立ちもしたがなw
今は造作なく会話できる。
でも喧嘩する時なんかは面白いもんだぜw
背中を向けていても彼女の怒りは俺に伝わるのに俺の言葉は伝わらないw
だから何の効果もないんだw
それを分かって喧嘩のときや都合の悪いとき、彼女は俺の顔を見ない。
手話も見ないw
テラヒドスw

 

127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:22:33.07 ID:4QDc0c6v0
それはさて置き。
ユウとのデートは当時付き合っていた彼女と会っている時間より楽しかった。
新鮮さもあってだとは思うが、
こうただ手をつないで適当な会話をして、適当な場所で遊んで・・。
って言うのよりもしっかりお互いの顔を見て自分の伝えたいことを身振り手振り口ぶりを駆使して会話することに心地いい疲れと共に満足感を得られたんだわw
単調な生活がその日だけは楽しいものになったよ。
そして俺は七時過ぎにユウと別れた。
「せんせ、きょうはあそんでくれてありがとう」
高校生になって礼儀も覚えたかw
深々とお辞儀をして帰っていった。
それにもう一つ、
塾にいた頃授業が終わると「ありがとございました」って言ってたんだ。
「ありがとう」って言えなかったの。
最後の「う」が本人は言っているんだろうけど切れるわけ。
「ありがとっ」みたいな感じかな。
それがこの時はちゃんと「ありがとう」って言えていた。
成長しているんだな・・・って何か切なくなった。
いいな・・学生って。
俺はつまらない生活を送っているなって。
誰かが言っていたよな?w向上心のない奴は馬鹿だってw
まさにその通り。
すげー自分のやること全てがだるくなった。
俺はダメダメだと鬱になった。
こうゆう状態って急に来るものなのな。

 

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:24:12.23 ID:4QDc0c6v0
決してユウのせいなんかじゃない。
自分が弱かったんだと思う。
彼女とのデート後、しばらくしてから俺は仕事を無断欠席することが多くなった。
すぐに会社はクビになった。
そりゃそうだわな。別にいいし・・なんてふざけた考えをしていた。
貯金は結構あった。
それを崩しながら堕落した生活。
パチンコ、スロット、競馬に、競輪・・。
吸わなかったタバコも吸うようになった。一気に部屋が黄色くなる。

 

132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:26:33.22 ID:4QDc0c6v0
そして付き合っていた彼女には仕事をやめたことは伝えていなかった。
会うことになるとスーツで向かった。
意外にもバレないw
つーか俺に関心がなかったんだわな、この頃既にw
でもユウには気づかれた。というか目撃された。
ユウと遊んでから半年くらい経ってからかな。
ボサボサ頭のスウェット姿でパチンコ屋から出てしばらくすると肩を叩かれた。その日は負けていて苛立っていたので「ああ?」なんて低い声で振り向いた。
すると少し怯えた様子のユウがそこにはいた。
たぶん俺の表情さえもひどかったんだと思う。
「せんせ、やすみ?」
構うなと思ったが、あの日遊んだきり会うことも連絡することもなかったユウの手前、邪険には出来なかった。

 

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:30:58.72 ID:4QDc0c6v0
「やすみ」
「そんなかっこうでみっともないよ」
カチンときた。ガキに説教される覚えはないと思ったからね。
タバコを取り出して火をつける。
ふとユウを見るとタバコをふかすジェスチャーをする。
しかも驚きと疑問の顔で。
「わるいかよ」
ユウと話すときの癖で大きく口を開けてしまった。
煙が彼女に掛かる。
「す、すまん・・」
ユウは咽ながら首を振る。
「せんせ、しごと・・」
何かを言いたげだった。
「へいじつ、さいきんよくみる」
「え?」
「しごとやめたの?」
俺はユウの顔を見ずにタバコを吸った。何も言えない。
こんなだらしない男に勉強を教えてもらっていたのかと幻滅されてんだろうなって思ってユウを見ることが出来なかった。
俺チキン。

 

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:32:16.65 ID:4QDc0c6v0
「せんせ」
タバコの火をサンダルの裏で消して彼女を見る。
「べんきょ」(小文字の後の母音発声は今でも困難な模様w)
「は?」
「おしえて」
俺は手を横に振った。嫌だよ。
「えいご」
「は?」
「えいごをおしえて」
彼女はバッグからプリントを取り出した。英語のテキストだった。

 

139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/06/04(木) 15:35:12.50 ID:4QDc0c6v0
俺はテキストを受け取り中身を見た。
懐かしいな・・、大学受験を思い出す。
「ため?」
ため?ああ・・ダメ?って聞いてるのか。なんかユウの発音に可笑しくなった。
馬鹿にしているわけじゃない。なんかユウと接していると面白いんだわw
俺は人差し指を上に向けて「いっかいだけ」と言った。
ユウは頷いた。
そして数日後、俺は初めてユウの家に出向くことになった。
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