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読んでくれてありがとうございます!
改めて見渡すと、部屋には学習机の上にデスクトップのパソコン、テレビ、ベッド、ソファーと文句のつけようがない家具が揃っていた。
荷物を整理すると時刻は17時を指していた。
A君はお見舞いなのか、出掛けて居なかった。
私もお見舞いに行きたかった。
が、血の繋がりのない自分がしゃしゃりでるのはな、と思い留まっていた。
まだ暫くは安静にしていないといけない筈だ。気を遣わせるわけにはいかない。
お風呂の掃除と準備を済ませて夕食作りに取り掛かった。
レストランのようには無理だけど、ハンバーグとサラダ、コーンスープを作った。工程が簡単だったからすぐ終わった。
ハンバーグが焼ける頃にA君が帰宅した。
本当にこんな真面目で素直な人っているのかなぁ・・
>>1の心の中には黒い部分、例えば他人の失敗を非難する所とかない?
>>120
非難する余裕がなかったんです。
自分のことで必死で、他人に構ってられないというか。
ものが無いのは当たり前、他人と自分は違うって早い段階で気付いていたから羨むこともなかったです。
今思えば諦めに近いですね。
「やっぱり>>1さんに頼んで良かったです」
夕食を食べながらA君が言う。
「本当はお手伝いさんを頼もうと思ってたんですけど打ち解けていない人が家をうろうろするのに抵抗があって」
人懐こい印象のA君からそんな言葉が出るのは意外だった。…思春期だし当然か。
「家庭教師、今まで通り教えてくれますか?家事頼んでいるから何か頼みすぎてるような」
「えっ、どんどん頼ってほしいよ。今まで通り頑張ろう!」
君なら私が居なくてもやれそうだ、とは口にしない。
「典型的だけど、やっぱり僕医者を目指そうと思います。これからもご指導宜しくお願いします」
良い子だな。本当に良い子だ。
「A君家のような家庭でも幸せだっただろうな 」
ポツリと本音がでた。
読んでくれて嬉しいです
「父が、"この家を自分の家だと思ってほしい"と言っていました。僕もそう思います」
「図々しいかもしれないですが、弟と思って下さい。僕達は家族みたいに先生を思っていますから。」
これまで淡い失恋で涙することは確かにあった。
けれど、割と楽観視して生きてきたから辛くて泣くことは殆んどなかった。
「先生!何で泣くんですか!」
慌てたA君の声で気がついた。
私は初めて嬉しくて泣いていた。
家族が増えた気がした。
心の底では今までだって家族のように思っていたのかもしれない。
気持ちが通じあったような気分になった。
「私がお姉ちゃんだったら…スパルタ教育だよ」
「今と何が変わるんですか」
「えっ、スパルタだっけ?!」
「冗談ですよ」
目が合ってお互い吹き出した。
こんなに自然に笑ったのは久しぶりかもしれない。
寒いので腹巻きも装着しておいて下さいな
家事にバイトに学校と充実した日々が始まった。
家族には定期的に会いに帰った。
お金さえあれば母が家事をする。
あなたはバイトと学校に精を出して、と言われたので後ろ髪ひかれることなく集中した。
もっと本音を言うと、宗教のおばさん達が毎晩のように野次に来ていたので逃れられて良かった。
おばさん達は、私だけは許せなかったようだ。
そんなとき、会長から一通のメールが届いた。
「どうしていますか? 貴女の 学校付近に 立ち寄る用事が 出来ました ランチでも 如何ですか。」
保守ありがとうございます
家事とバイトを優先させたかった私にとって、ランチのお誘いは好都合だった。それなら時間を削ることがない。
是非、と誘いにのった。
あっという間に当日はきた。
その日は丁度午後からの授業が休講だった。
指定された待ち合わせに向かう。
「!」
相変わらず派手な会長がそこにいた。
案内されたのはイタリアンレストランだった。
「さ、好きなもの何でも頼んで」
「…」
「美味しい、こんな美味しいお店知ってるなんてグレイトー!って言われるのが嬉しいんだよ」
「それどこのお姉ちゃんに言われたんですか」
笑って言うと会長はいつものように豪快に笑った。
な、なんですって…
濃い一時間半だった。
近況を軽く話すと、「そうだったのか」と会長は考え込んだ。
「仕事の期限はいつでもいい。どれだけ提出が遅れても、給料だけは毎月きちんと払うことも約束するよ」
冗談好きな会長が真面目な顔をする。
「だから、今はその人達の為に尽力するんだよ。何かあれば必ず助けるから
…君が誰かの役に立ちたい、と思うその気持ちは貴重なものだ。
尊重するんだよ。決して無理はしないように」
その言葉だけで嬉しかった。