ありがとうございます!!!
当日、会長に土下座する勢いでお礼の電話をした。
「ははは、隠しおって」
会長の第一声はこれだった。
「?」
「1月。誕生日だったろう?履歴書を見て以来覚えていたんだよ。僕も言うのをすっかり忘れてたけどね。おめでとう。この旅は僕からのプレゼントだ」
あえて教えなかったのに。
会長もきっとわざとこのタイミングで教えてくれたのだろう。
「Have a good trip!」
こんな人が本当にいるなんて。
神様、仏様、閻魔様。
こういう運命に導いてくれた何かがあるのなら、全力でお礼を言いたい。
この先は、私が誰かを助ける側にならないと。
成田空港で迷うのが一番不安だった。
その為、下調べを何度もしてこの日に備えた。
当日は容易に搭乗手続きまで済ませられた。
行き交う人々と飛行機に想いを馳せる。
皆それぞれ目的の場所があって、言葉にし尽くせないほど様々な感情を抱いてここに集っている。
無表情に歩いているあそこの綺麗なお姉さんだって、内心何らかの感情に満ちているはずだ。
…そんなの、どこにいても一緒なんだけど。
空港という場所は殊更新鮮にそういう気分にさせてくれる。
約半日のフライトを経て、私はとうとう憧れのニューヨークという地に立っていた。
ケネディ空港からイエローキャブでマンハッタンまで向かう。
女性が一人でマンハッタンまで来るのは心配だから、とエイミーさんからの指示だった。
当たり前だが、流れる景色は、東京や大阪や福岡…日本のどの地とも全く異なる。
建物が高くて、道路も横に広い印象を受けた。
ボキャブラリーが感情を凌駕することは、永遠にない。
建物や道行く人、看板、どれをとってもしっくり当てはまる言葉が浮かばない。
「暑い」や「寒い」といった本質的でシンプルな言葉しか発することが出来なかった。
たくさん浮かれよう、と決めてキャブから降りた。
多分、この日マンハッタンにいた誰よりも私は小躍りをしている。
待ち合わせのハードロックカフェ付近でそう確信していると、目の前のブロンドのご婦人がバレエのダンサーのように高く脚を挙げてくるくると回った。
驚いて凝視していると、そこに一台のタクシーが停まった。
するりと乗り込む小太りのご婦人。
誰かがブラーボ、と歓声を浴びせた。
年齢は分からないけど爺ってジジイ呼ばわりしてるのがw
お爺さんとか初老とかにして欲しかったな
私ひどい
追い付いた。
1はなんて素敵な女性なんだ!
これは応援したくなるわwww
この後も期待してるぞ♪
ありがとうございます(・ω・`*)
「>>1ちゃーん!」
エイミーさんだと名乗る女の人は、私のイメージ通りの人だった。
健康的な色黒で、体の線はすごく細い。
黒くて長い、軽くウェーブのかかった髪に、クッキリした目鼻立ち。
ダブル(ハーフ)の方かと思った。
後に、長谷川潤さんに似ていると気付く。
「初めまして!よく来たねー!さ、ご飯行こう、お腹空いたでしょ?」
ちょっとハスキーな声も素敵だ。
モデルさんのように髪をかきあげて、エイミーさんが歩き出した。
エイミーさんが教えてくれたのは、オープンカフェ。
お薦めのハンバーガーを頼み、向きなおす。
「改めて…初めまして、エイミーです。本名はアミなんだけど、エイミーで定着しているからエイミーでいいよ!」
ハスキーボイスに訛った日本語が心地良い。
「初めまして、>>1です。」
とは言ったものの、沢山メールでやり取りしたから不思議と初めまして、な気分じゃない。
「会長さんから色々聞いたよー大変だったんだって?頑張りやさんのご褒美だと思ってニューヨーク楽しんでねー!」
いしし、というようにエイミーさんが笑う。
名倉の潤ちゃん?!
「私、亡くなったアヤちゃんの親友なの。それにしても似てるねー、懐かしくなるよ」
会長の娘さんの、と相槌をうつ。
エイミーさんは嬉しそうに頷く。
その時、ハンバーガーが運ばれてくる。
「さっ、食べて食べて!」
尋常じゃない量のポテトに驚きつつ、ハンバーガーをつついた。
今まで旅した国のことを聞かせてほしいとせがんだら、嬉々として語ってくれた。