619:名無しさん@お腹いっぱい。 : 2010/05/29(土) 08:18:35 ID:
その日の翌々日からシゲが勉強をしに家に通ってくることになった。
俺も学校があるので週3回、午後5時から10時まで。
それまで通っていた家庭教師のバイトは暇をもらった。
高1で中退したと聞いていたので失礼ながら相当頭悪いのかと思っていたら、
これが中々理解力もあるし、レベルの高い例題もすんなりこなしていくのでびっくりした。
「何だ。シゲ勉強出来るじゃん。」
「だって辞めてからも勉強してたもん。」
とつとつと話し始めたのを聞くとシゲは勉強は嫌いじゃない、むしろ好きらしい。
「じゃあ、学校辞めなきゃよかったじゃん。」
言った途端、シゲの顔が急に曇った。
「うっさいな。色々あんだよ。」
この時は知る由もなかったがシゲが退学した原因は後々知ることになる。
大検用テキスト3周終わって、何とか目処がつき始めたので英語のリスニング問題に取り掛かった。
いつもダイニングの対面に座って教えていたのだけれど、
リスニングの時だけは椅子をちょっとずらしてテーブルの上のデッキに右耳を近づけるようにして聞いていた。
「お前まっすぐ座って聞きなよ。姿勢悪いとカンニング疑われるよ?」
格好が面白くって思わず笑いながら言うとシゲがあっけらかんと答えた。
「言ってなかったっけ?私左耳聞こえないんだよ。
学校でビンタされて鼓膜破れちゃってさ。医者行かなかったんで駄目んなっちゃった。」
「ちょっ、馬鹿。医者行けよ。鼓膜くらい直んだろ。」
「そんなことしたら親に心配かけんだろ。わかってねーなー、もう。」
「ごめん・・・」
謝るしかなかった。
俺も学校があるので週3回、午後5時から10時まで。
それまで通っていた家庭教師のバイトは暇をもらった。
高1で中退したと聞いていたので失礼ながら相当頭悪いのかと思っていたら、
これが中々理解力もあるし、レベルの高い例題もすんなりこなしていくのでびっくりした。
「何だ。シゲ勉強出来るじゃん。」
「だって辞めてからも勉強してたもん。」
とつとつと話し始めたのを聞くとシゲは勉強は嫌いじゃない、むしろ好きらしい。
「じゃあ、学校辞めなきゃよかったじゃん。」
言った途端、シゲの顔が急に曇った。
「うっさいな。色々あんだよ。」
この時は知る由もなかったがシゲが退学した原因は後々知ることになる。
大検用テキスト3周終わって、何とか目処がつき始めたので英語のリスニング問題に取り掛かった。
いつもダイニングの対面に座って教えていたのだけれど、
リスニングの時だけは椅子をちょっとずらしてテーブルの上のデッキに右耳を近づけるようにして聞いていた。
「お前まっすぐ座って聞きなよ。姿勢悪いとカンニング疑われるよ?」
格好が面白くって思わず笑いながら言うとシゲがあっけらかんと答えた。
「言ってなかったっけ?私左耳聞こえないんだよ。
学校でビンタされて鼓膜破れちゃってさ。医者行かなかったんで駄目んなっちゃった。」
「ちょっ、馬鹿。医者行けよ。鼓膜くらい直んだろ。」
「そんなことしたら親に心配かけんだろ。わかってねーなー、もう。」
「ごめん・・・」
謝るしかなかった。
620:名無しさん@お腹いっぱい。 : 2010/05/29(土) 08:21:26 ID:
シゲも死に物狂いで勉強したので、
余裕とまではいかなかったけれど大検はクリアした。
本人も飛び上がっていたが親父さんが男泣きするくらい喜んでいた。
でもこれは通過点に過ぎない。
本人がどうせ取るなら二級じゃなく一級建築士だと言い張るので、実務経験が少なくて済み、かつ技術的に高度なことが学べる学校を探して受験した。
結果、不合格。
「やっぱバカはバカなんだ。何やってもバカはダメなんだ。」
とオイオイ泣くので、
「俺だって一浪だし何とかなるよ。」
と根拠のない慰めでもう一度トライ。
自分の卒論落としかけてまでシゲの受験勉強に没頭した。
2年以上みっちり一緒にいて危ない橋を渡っていると、
不思議なものでつり橋効果のせいかお互い何だか好きかも知れないと思い始めて、ふざけてキスしたりしていたある日、
「悠(俺の仮名)って童貞?」
「何言ってんの!?違うよ!」
「えー、何か童貞くさい。」
「うっせ、セックスくらいしたことあるって。」
「本当?」
「2回ある!」
変なツボに入ったらしくてゲラゲラ笑い出すシゲ。
「全然手出してこないから童貞だと思ってた。でも2回って・・・2回って・・・ゲラゲラゲラゲラ。」
いたく自尊心を傷つけられて言い返す。
「バカシゲ。どうせ俺はお前みたいなビッチと違って限りなくピュアに近いです。ヤリマンは巣に帰れ!帰って犬とでもやってろ!」
「てめ、ヤリマンとか言うな!あたし男となんてしたことないよ!死ね!なんちゃって童貞!」
母親にふざけてないで勉強しろと怒られたが、毎回こんな調子で半分勉強、半分おしゃべりで1年が過ぎていった。
余裕とまではいかなかったけれど大検はクリアした。
本人も飛び上がっていたが親父さんが男泣きするくらい喜んでいた。
でもこれは通過点に過ぎない。
本人がどうせ取るなら二級じゃなく一級建築士だと言い張るので、実務経験が少なくて済み、かつ技術的に高度なことが学べる学校を探して受験した。
結果、不合格。
「やっぱバカはバカなんだ。何やってもバカはダメなんだ。」
とオイオイ泣くので、
「俺だって一浪だし何とかなるよ。」
と根拠のない慰めでもう一度トライ。
自分の卒論落としかけてまでシゲの受験勉強に没頭した。
2年以上みっちり一緒にいて危ない橋を渡っていると、
不思議なものでつり橋効果のせいかお互い何だか好きかも知れないと思い始めて、ふざけてキスしたりしていたある日、
「悠(俺の仮名)って童貞?」
「何言ってんの!?違うよ!」
「えー、何か童貞くさい。」
「うっせ、セックスくらいしたことあるって。」
「本当?」
「2回ある!」
変なツボに入ったらしくてゲラゲラ笑い出すシゲ。
「全然手出してこないから童貞だと思ってた。でも2回って・・・2回って・・・ゲラゲラゲラゲラ。」
いたく自尊心を傷つけられて言い返す。
「バカシゲ。どうせ俺はお前みたいなビッチと違って限りなくピュアに近いです。ヤリマンは巣に帰れ!帰って犬とでもやってろ!」
「てめ、ヤリマンとか言うな!あたし男となんてしたことないよ!死ね!なんちゃって童貞!」
母親にふざけてないで勉強しろと怒られたが、毎回こんな調子で半分勉強、半分おしゃべりで1年が過ぎていった。
621:名無しさん@お腹いっぱい。 : 2010/05/29(土) 08:23:22 ID:
1年後「どうせダメ。落ちてるに決まってるし。」としり込みするシゲを連れて親父さんと一緒に合格発表を何回も見に行った。
ランクを落とすよりは上げて失敗した方がいいというシゲの男っぷりで駄目元で受けたところだけ合格していた。
「大金星だなぁ」
と親父さんはオイオイ咽び泣く。
シゲは狐につままれたようにきょとんとして、
「悠、ほっぺたぶって。」
と言うので思いっきりビンタしたら、
「何すんだ、この野郎!」
とキレられ三倍返しされた。
何にせよめでたいシゲの門出だった。
寿司屋で祝杯を上げた後、親父さんはへろへろになっちゃってシゲのおふくろさんに抱えられて帰っていった。
取り残された俺とシゲ。
「どうする?もうちょっと飲む?」
「お酒もういいや。少し歩きたい。」
半ば千鳥足で二人して笑いながら月の下を歩いた。
「あのさー、悠に何かお礼しなきゃまずくね?」
「いいよ、別に。兄ちゃん家の窓ただで二重サッシにしてもらったし。」
「そういうんじゃなくってさー。もうちょっと何かさー。」
「じゃあシゲが建築士になったら俺の家設計してよ。何年先になるかわかんないけどさ。」
「しょーがねーなー。設計料50%オフでやってやっか。」
夢に溢れたシゲの顔を見ているのがとても楽しかった。
俺は俺で教員採用試験に落ちて凹んでた最中だったので尚更だった。
ランクを落とすよりは上げて失敗した方がいいというシゲの男っぷりで駄目元で受けたところだけ合格していた。
「大金星だなぁ」
と親父さんはオイオイ咽び泣く。
シゲは狐につままれたようにきょとんとして、
「悠、ほっぺたぶって。」
と言うので思いっきりビンタしたら、
「何すんだ、この野郎!」
とキレられ三倍返しされた。
何にせよめでたいシゲの門出だった。
寿司屋で祝杯を上げた後、親父さんはへろへろになっちゃってシゲのおふくろさんに抱えられて帰っていった。
取り残された俺とシゲ。
「どうする?もうちょっと飲む?」
「お酒もういいや。少し歩きたい。」
半ば千鳥足で二人して笑いながら月の下を歩いた。
「あのさー、悠に何かお礼しなきゃまずくね?」
「いいよ、別に。兄ちゃん家の窓ただで二重サッシにしてもらったし。」
「そういうんじゃなくってさー。もうちょっと何かさー。」
「じゃあシゲが建築士になったら俺の家設計してよ。何年先になるかわかんないけどさ。」
「しょーがねーなー。設計料50%オフでやってやっか。」
夢に溢れたシゲの顔を見ているのがとても楽しかった。
俺は俺で教員採用試験に落ちて凹んでた最中だったので尚更だった。
622:名無しさん@お腹いっぱい。 : 2010/05/29(土) 08:26:05 ID:
気がつくとホテル街に差し掛かっていた。
「ここってさ。みんなHするために来てんだよね?」
「そりゃそうだろ。そういうとこだもん。」
「何か変な感じ。」
「行きなれてそうなお前が言うほうが変な感じだって。」
「したことないって言ったろ!忘れたん!?」
「そうだったそうだった。ビッチシゲはまだ処女だった。」
茶化しながら通り過ぎようとすると、
「よくさ、休んで行こうかとか言うって言うじゃん。でも実際は運動するんじゃないの?」
面白いこと言うなと思った。
数えるくらいしか経験ないけど確かに休憩じゃなくて運動だ。
ふざけ半分で、
「何なら俺と運動してくか?」
ご機嫌で歩いてふと横を見るとシゲがいない。
振り向くと10mくらい後ろで下を向いてたたずんでた。
「ごめん。ごめん。嘘だって。」
好きと言ってもシゲは女というより男友達みたいなもんだったので冗談が過ぎたかなと後悔した。
そうしたら、
「いいよ・・・」
「は?」
「悠とだったらいい。」
さっきまでとは打って変わったシリアスな雰囲気に気おされて、
「運動って言ってもラジオ体操とかじゃないよ?」
とボケをかますも、
「そんなんわかってるよ!黙って連れてけ!」
シゲ主導でホテルに入った。
「ここってさ。みんなHするために来てんだよね?」
「そりゃそうだろ。そういうとこだもん。」
「何か変な感じ。」
「行きなれてそうなお前が言うほうが変な感じだって。」
「したことないって言ったろ!忘れたん!?」
「そうだったそうだった。ビッチシゲはまだ処女だった。」
茶化しながら通り過ぎようとすると、
「よくさ、休んで行こうかとか言うって言うじゃん。でも実際は運動するんじゃないの?」
面白いこと言うなと思った。
数えるくらいしか経験ないけど確かに休憩じゃなくて運動だ。
ふざけ半分で、
「何なら俺と運動してくか?」
ご機嫌で歩いてふと横を見るとシゲがいない。
振り向くと10mくらい後ろで下を向いてたたずんでた。
「ごめん。ごめん。嘘だって。」
好きと言ってもシゲは女というより男友達みたいなもんだったので冗談が過ぎたかなと後悔した。
そうしたら、
「いいよ・・・」
「は?」
「悠とだったらいい。」
さっきまでとは打って変わったシリアスな雰囲気に気おされて、
「運動って言ってもラジオ体操とかじゃないよ?」
とボケをかますも、
「そんなんわかってるよ!黙って連れてけ!」
シゲ主導でホテルに入った。