思ったより早く帰れた。
みんなありがとう。少しだけど、書かせて頂きますね。
散歩から帰ると、病室に一人の女の子の姿があった。
どうやら、彼女の高校時代の友人らしかった。
彼女「てて子…」(名前は仮名です。LOVの彼女のお気入りの使い魔から)
友人「心配してたよ…」
俺「こんにちは」
俺は空気を読んで席を外そうとした。すると、
彼女「いていいよ…」
彼女がそういうので病室に残ることにした。
彼女たちは懐かしい話に話を咲かせていた。
でも終始、彼女が病気の話に触れることはなかった。
そして30分くらいしたらだろうか、友人さんはお見舞いをおいて去っていった。
見たところ、癌のことすら知らななそうだし、彼女の病気について知らなそうだった。
俺「友達には、病気のこと話してないの?」
彼女「うん、てて子だけだよ。それに癌とか知らない。すぐ治ると思ってる。」
俺「誰にも言わなくていいの?」
きっと俺が同じ状況になったら多くの友人に言ってしまう。
彼女「心配かけたくないじゃん。普通、みんなビックリしちゃうよ。
本当に少しの人が分かってくれてれば、それいいんだから」
彼女はとても優しい口調で言った。
でも海種使いだったのかな。
その少しの人に、俺が入っていたのは、嬉しくもあり、
なんとも言えない気持ちだった。
この子はもし俺がいなかったら、誰にも言わず、家族だけに頼って、
そう思うとなんだか辛くなった。
それからの日々は割と穏やかだった。
彼女は病院から離れられなかったが、俺は大学をできるだけ抜け出し
なんとか毎日でも彼女に会いに行った。
花が好きだったから、けっこうな頻度で花を買っていった。
彼女のお気に入りの花はトルコギキョウという花だった。
俺が偶然花屋さんで見つけて買っていった花を、彼女はとても気に入ってくれた。
青と白の色合いが綺麗な花だった。
でも毎回なるべく違う花を買っていった。
そして病室で二人で「花擬人化ごっこ」
をして持っていった花を女の子の絵にして遊んでいた。
よく笑った。花を持って行くと彼女は決まって
満面の笑みになって喜んでくれた。
彼女「今日はどうしよっかなー」
なんて言ってふたりで花を見て絵で遊んで、
本当に彼女が病気だってこと忘れるくらいに楽しかった。
でもいつもいつも調子がいいわけじゃなく、
日によっては行っても起き上がることすら辛い日もあって、
そうすると俺はふっと病気のことを思い出して途端に辛くなった。
そんな日も俺はお母さんに言って、持っていった花だけは
花瓶に入れるようにしていた。
ある日、いつものように病室に向かうと、
やたらテンションの高い彼女がいた。
彼女「ねえねえ、聞いてよ聞いてよ!」
俺「あらら、元気だね。どうしたの?」
彼女「外泊許可がもらえたよ!五日間!」
俺「本当に!?」
彼女「嬉しいなあ。2日間はおうちに帰るけど、わたし三日間は富澤といるよ!」
俺「本当に!」
トルコキキョウの花言葉>>1は知ってる?
その事について触れるとしたらごめんなさいね
彼女「デート行きたい!デート!」
俺「いいね、いこういこう。」
彼女「ゲーセン行こうよ、ゲーセン!」
こんなに元気で明るい彼女を見るのは久しぶりだったので、
俺はすごく嬉しかった。
どうにか彼女をたくさん楽しませてあげたい、そういう風に思った。
二人で、三日間何をするか考えふけった。
彼女はゲーセンに行きたくて、俺と普通のデートが一度してみたかったのだという。
そして、俺の生まれ育った街が見たいということで、俺の実家に来たいということ。
この二つだった。
彼女は多くを望まなかったし、贅沢も言わなかった。
何か欲しいものとかないの?
と聞いても、「ただ一緒にいたい」と言うだけだった。
もしかしたら、最初で最後のデートになるかもしれない。
俺は覚悟していた。
この、外に出られる、普通に過ごせる三日間で彼女を最高に笑わせたいと思った。
俺は色々考えた。プレゼントを買うために、貯金を下ろした。
何を買うか、迷ったが、COACHの帽子をあげることにした。
彼女はCOACHが好きで(と言っても財布しか使っていなかった)、きっと帽子なら喜んでくれると踏んだ。