現実の修羅場には、平手打ちも怒鳴り声もなかった。でも怖かった。

四年前の話です。年齢は当時。

私・25歳、会社員。
A子・24歳、私の同僚。
B子・22歳、私とA子の後輩。
C男・27歳、A子の彼氏。会社は別。

私の会社では当時、新卒採用が少なく、女子社員は同期でなくても仲が良かった。私とA子は一つ違いだけれど、休日に一緒に遊びに行く友人。
更に後輩のB子も、入社半年後くらいから時々A子や私と一緒にお昼を食べるようになった。研修で私やA子と同じ部署に来たからだ。
A子はものすごく仕事ができる。顔立ちは派手な美人。
B子はおっとりしたおとなしい子。着るものも地味。遅くまで残って研修の課題をしていたり、真面目で一生懸命な感じがした。

>>172
はい、私は女性です。それから支援感謝です。

B子は相変わらず口数が少なかったけれど、礼儀正しくてにこやかだったし、彼氏二人もそれなりにうまくやってくれて、鍋もお酒も順調に空いた。八畳のワンルームに五人なので、C男はベッドに座って、そのうち寝てしまった。
お酒がなくなったので、私と彼氏がコンビニへ行き、帰ってきた。A子は台所で果物をむいてくれていた。私が少し開いた引き戸の隙間に目をやると、
B子がベッドにかがみ込んでC男にキスをしていた。

B子がこちらを見た、と思う。
私は何も言えなかった。私たちはまた少し飲んで、解散した。

それから一ヶ月近く、私はA子にその話をすべきかどうか悩んだ。見間違いかもしれない。うまく説明できる自信もない。
話そうと決めたのは、B子が珍しく上司に逆らった日だった。
B子はやけに能弁で、その口調はA子に似ていた。そしてB子は、見覚えのある服と靴を身につけていた。A子の好きなものにそっくりだった。

B子はきっと、あの時C男を好きになってしまったんだろう。それでA子みたいになろうとしているのだろう。B子の容姿にも性格にも合っていないちぐはぐな物言いと服装は、そう思わないと納得できなかった。
私はA子とC子に声をかけた。自分では言えなかった。C子に「なにかA子に言わなくちゃならないことがあるんじゃない？」と聞いた。

B子は涙ながらに「C男が好き」と語った。それだけではなく、なんと既にC男の家に泊まったのだという。
後日A子がC男を問い詰めたところ、初対面でアドレスを交換してすぐに連絡があり、押しかけられてつい関係したとのことだった。
B子はA子の前で、「ファーストキスで、初めての人なんです。私どうしたらいいか」と泣いた。A子は混乱していたのか、「人の家でキスとかしないでほしい」とばかり繰り返していた。「せっかく部屋を借りたのに」と。
現実の修羅場には、平手打ちも怒鳴り声もなかった。でも怖かった。

これで最後です。

半年後、B子は完全にA子になりきっていた。本配属の部署が私とは違ったのでしばらくぶりに見かけたら、気持ち悪かった。ファッション、化粧、言葉づかい。表情まで似ていた。同じ部署の人に探りを入れてB子のブログをのぞいたら、趣味までA子と同じになっていた。
更に半年して、A子が突然、私の家に泊まりに来た。
「怖いから今日だけ泊めて。すぐに実家に帰るから」と。

B子がA子と同じマンションに引っ越してきたのだそうだ。

ごめんなさい、C子はB子の間違いです。順番も間違うし、何のためにまとめたんだか。

いえ、ほんとにこの後のB子のことは知らないんです。
見かけても関わらないようにしているし、最近は見ません。だから誰かに聞いてほしくて書いたのかもしれません。
A子は今でも同じ会社に勤めています。去年結婚しましたが、相変わらず仕事はめちゃくちゃできます。

聞いてくださってありがとうございました。