仕事が急激に忙しくなり始めた。
毎日終電・休日出勤は当たり前。
しかも、残業は月に決められた時間(15時間)しかつけられないので、
ほとんどサービス残業のようなものだった。
毎日が目が回るほど忙しく、またその忙しさに見返りもない。
仕事に対するモチベーションがなくなり始めて、吐くほど悩みつつ、
時間がないので彼男にも相談できず、悶々とする日々が続いた。
そんなある日。友香の騒動から数か月経ったころ。筆不精の共子から珍しくメールが入った。
友香のことで話があるというので、就業中、時間を見つけて共子に連絡を取ると、
沈んだ声が返ってきた。
「私子・・・、もしかしたら友香、クズ男とまだ切れてないかもしれない」
「・・・え?どういうこと?」
「またあの二人、一緒に住んでるかも・・・」
「はい?」
もしかしたらまだクズ男に付きまとわれてる!?と心配になって、
いざとなったら警察に連絡をとらなければと二人をこっそりつけたらしい。
すると、二人してとあるアパートに入って行った。
また、そのアパートの郵便受けからカタログらしきメール便がはみ出ていたので何気なく見ると、
友香が愛用している下着の通販カタログだったらしい。
その状況から、「友香とクズ男がまた一緒に住んでいる」という仮説が浮かんできて、
たまらなくなり私に連絡してきたそうだ。
「どういうこと?あんなにがんばってクズ男から逃げだせたのに。
それに、赤ちゃんはどうなったの?そろそろ生まれているころだよね?」
「わかんない・・・私が見た時はいなかったな。おなかも大きくなかったなあ、そういえば」
よりを戻したのかどうなったのかはわからなかった。
あの騒動以来、友香から連絡は来てない。
出産等で大変だろうと思い、私からも連絡は入れていなかった。
「なんかちょっともやもやするな・・・。今度、友香に連絡とってみる」
そう言い合って、電話を切った。
先だっての仕事の悩みや、先ほどの共子の電話内容をとにかく彼男に相談したくて、
何より声を聞きたくてのことだった。
なにしろ、時間がすれ違ってばかりで、彼男とは数か月会ってなかった。
久しぶりの電話はしかし、友香の話をしたあたりから雲行きが怪しくなった。
「マジで・・・?友香さん、今クズ男と住んでんの?」
彼男の声がものすごい不機嫌というか切れかかっているというかそんな声になり、
「いや、あくまで共子の仮説だからさ・・・。時間みつけて友香に連絡とって事情話してもらおう。
ほんとは今すぐにでも話をしたいんだけど、私、今日も夕方からミーティングでさ・・・」
「わかった。じゃあね!」
私の話を遮って電話を切る彼男。その態度にショックを受ける私。
なんか最近彼男の態度が冷たいなーと思いながら仕事に戻る。
するとラッキーなことに、上司が夕方からのミーティングが中止になった旨を伝えてきた。
その日のうちに片づけなければならない仕事は済んでいたため、ここぞとばかりに退社。
先ほどの電話の態度が気にかかっていた私は、彼男に会いに行くことにした。
彼男のアパートに着くと、ドア越しから声が聞こえてきた。
男女がもめているような声だ。そして、明らかに男の声は彼男・・・
えっ!?えええええ!???とパニックになり、ドア前で放心状態の私。
容赦なく聞こえてくる痴話喧嘩。
「だから!まだクズ男と切れてなかったのかよ!」
「あなたには関係ないでしょ?!」
・・・ええええ!相手はもしかして友香??!??!
ど、どういうこと!!?
「関係ないとかどういうことだよ!俺達付き合ってるんじゃなかったのか?」
ま、ま、ま、マジっすか!?
「そ、それとこれとは別でしょ!彼男君だって私子ちゃんとまだキチンと別れてないくせに!」
「話し合いに応じてくれてないだけだよ!ちゃんと俺の意思は伝わってる!」
いやいやいやいや、初耳ですよ!初耳だからこそ足がすくんで立っていられませんよ!
へなへなとその場に座り込む私に、とどめを刺すように容赦なく聞こえる二人の声。
なにもできずに呆然としていると、アパートの外階段を上ってきた熊男が私を見つけた。
どうやら同じアパートに住む熊男のところにも二人の声は届いたらしく、様子を見にきたらしかった。
「わ、私子さん、お久しぶりです・・・」
状況が状況なだけに、私と彼男の部屋のドアを交互に見る熊男。
どうやらいろいろと状況を悟ったのか、「ええと・・・」と頭を掻きながら私を抱えあげて
立たせてくれた。
「あの、私子さんって、彼男さんと別れたんじゃなかったんでしょうか・・・?」
「う、うん、私はまだ付き合ってると思ってたんだけど・・・ナニコレ・・・」
まだ魂が抜けた状態の私に、熊男は説明をしてくれた。
友香の騒動が起こってから、私があまり彼男のアパートに来ないと思っていたら、
それからしばらくして友香が頻繁に来るようになった。
熊男はてっきり、彼男は私と別れて友香と付き合うようになったのだと思ったらしい。
彼男は守ってあげたくなるようなタイプが好みだと常々言っていたので、
悲劇に見舞われた友香に惹かれてもおかしくないだろう、と。
いろいろなぞではあったが、彼男は先輩(しかも部活では地位が高い)だし、
突っ込んだことは聞けずに今に至るらしい。
そんな話をしている間、気がつけば痴話喧嘩は終了していた。
そして、その代わりにギシアン音が・・・
発狂しそうになり、私は思わず彼男の部屋のドアを開けた(合鍵持ってた)。
彼男と友香のそういう現場を目撃してしまった私は、冷静に対応しなければという意識とは間逆に
泣き叫びながら彼男に向かってロボコンパンチをしてしまう、という燦々たる結果に。
そのせいで彼男、格闘魂に火がついたのか、もしくはそういう気質を隠し持っていたのか、
私は彼男に思いきり突き飛ばされて壁に激突し、頭を強打して意識朦朧状態に。
まず、友香が裸のまま逃げようとする→熊男がなんとか取り押さえようとするが、
裸の女性に触れるのがためらわれ、結局トイレに籠城される。
彼男が開き直る→朦朧としている私に向かって、「私子が悪い!」と言い始める。
「私子が悪い!仕事だかなんだか知らないけど急に会えなくなって冷たくなって・・・
それに友香さんは俺が守ってあげなきゃいけないんだ!」
熊男→とにかく私子さんは大丈夫か?!と私子に近寄ると、彼男が「私子に近づくな!」と
攻撃をしかけてくる。
格闘技の実力では彼男>>>>熊男だったが、その時は熊男勝利。彼男を投げ飛ばす。
私の状態から病院に行った方がいいと判断→その場はとりあえず放置し、タクシー呼んで病院へ。
とにかくカオスだったらしい・・・。
病院に着くころには私の意識は回復し、検査の結果、軽い打撲(たんこぶw)ですんだ。
次の日は仕事を休み家で安静に・・・できるはずもなく、共子に内容をかいつまんでメールすると
半休取って見舞いに来てくれた。
共子に話を聞いてもらい、反動でやたら開き直った私。
彼男から来る意味不明なラブメールに大爆笑できるくらいまでになった。
浮気(というか本気?)しておいて、今更「俺には私子だけだ」はないよね~、と。
つい1日前までは、彼男大好きだったのに、もうきれいさっぱりその気持ちは無いことを確認し、
メール返信。
「もう連絡するな。あんたの望みどおり別れてあげる。私に連絡したり近づいてきたりしたら
容赦なく障害で告訴するからそのつもりで。診断書も取ってあるので」
・・・このメールを彼男に送ってそのまま着信拒否・メール受信拒否設定しました。
共子は彼男を私に紹介した罪悪感からか、しきりに謝られたことがちょっと泣けた。
以下の事実は共子や熊男に又聞きしたことなのですが、かいつまんで。
・友香とクズ男は結局最初の騒動のすぐ後に復縁したようだ。
(友香からクズ男のもとに戻ったらしい)
共子の予想はほぼ合っていて、新しく友香名義でアパートを借り、一緒に住んでいたらしい。
・しかし、そうだからと言ってDVは直っておらず、結局元の木阿弥に。
・で、なんでか友香は彼男に相談w
彼男、「俺が守る!」と意気込む→加護対象に惚れる→W二股に。
ちなみに、友香は彼男には「またクズ男につきまとわれ、モラハラを受ている」と
言っていたらしく、彼男は手玉に取られた状況。
・赤ちゃんは結局、中絶していたようです・・・
・私が熊男に病院につれてもらった後、彼男と友香、痴話喧嘩再開
・彼男「俺、やっぱり友香さんより私子が好き!」と目覚める。
・友香怒って出ていく、彼男は私子に見当違いのラブメールを大量送信
・・・という流れらしい。
以上です。
文章ヘタですみません。わからないことがあったらご質問ください。
支援ありがとうございました!
登場人物のその後は?
821はいい男つかみましたか?
結局その後の関係者はどうしてるの?
私・・・相変わらず忙殺の日々。転職を真剣に考えてる。男はしばらくいいや・・・
彼男・・・熊男情報によると、合コン行きまくってるようです
友香、クズ男・・・まだ一緒に住んでいると思います。
共子・・・普段どおりです。メールは多くなりました。
熊男・・・仲良くなりました。ちなみに熊男には彼女がいますw残念ながらこのルートはありませんw
お疲れ様!予想の斜め上を行く展開読んでて楽しかった、っていったら不謹慎だけどw
熊男さんかっけーなぁ、でも何で熊なの? 見た目が熊みたいなの?
この文章を書きまとめるのに1週間かかったので、楽しんでいただけてうれしいですw
熊男は見た目クマさん(しかもヒグマのほう)なので熊男です。