興信所の調査員が
「実にユルユルでしたね。まったく警戒してなくて簡単でしたよこりゃ弁護士さん楽ですよぉ」
と笑った。
そういえば弁護士っていう発想はなかった。
弁護士っていうと、即裁判ってイメージがあったから
証拠だけ集めて自分で突きつけることを考えていた、
恥ずかしながら調査員に訊くと、裁判はもちろんそうだけど
交渉事に同席するのは常識といわれた。
俺はバカだった。
もう恥ついでに弁護士の紹介も頼んだ。
知り合いにも友達にもそんなつてはなかったし。
調査員は、「いえいえ良くあることですから」と、紹介してくれた。
「ちなみに弁護士も報酬は後払いですよw
着手金っていうのを5万くらい用意すれば大丈夫」
「あの人たちは住民票取る感覚で訴訟起こしますから速攻ですよw」
ちょうど定期を解約した金があったので、着手金は即金で払える。
後から考えると、興信所にキックバックとか発生してるだろうから
割高だったのかもしれないけど。
紹介された弁護士は女性だったので、最初ちょっと嫌な予感がした(後にこれは杞憂だったが)。
弁護士が争点を決めようと言うので、こちらの希望は親権だけだと伝えた。
すると彼女は、財産配分とか慰謝料とかも決めなくてはいけないと言った。
俺は自分の無知さ加減がどんどん情けなくなってきた。
親権に関してはいろいろ難しいかもしれないと言われ、
俺と元嫁の育成環境について訊かれた。
俺;実家に両親と、すぐ近所に姉一家が在住
元嫁:両親が離婚しているため、いわゆる実家は存在せず
母親のアパートが強いてあげればそれに該当
それを聞いた弁護士が「うん!うん!いける!」と言い出した。
まず、保健所に行って一人親世帯(母子ではない)の育成手当に関する相談に行くこと。
これを2回くらい行って既成事実を作る。
次に、母親に引き取られた場合の育成環境についてネガティヴな面をまとめると
・父親を失ったばかりの子供に、母親の恋人が出入りする光景を見せることになる
・昼間母親が働いているとき、祖母も働いているので子供は一人になる
一方父親の育成環境は、祖父母がおり、すぐ近くには叔母夫婦がいて従兄妹もいる
育成環境として子供のためになるのは明らかに父親の方である
しかも母親は不貞を働いており、母親に引き取られた場合の
子供への影響は推して知るべし
的な立論で、証拠もこれだけ揃っているから裁判になっても大丈夫
さあ慰謝料いくら取りましょうかね♪
みたいな感じだった
みっともないけど、俺はその場でボロボロ涙が出てきた。
遠足の用意を、「ママ忙しいんだね」って言いながら俺と一緒にやってた
娘の顔を思い出した。
「泣かない泣かない!」と弁護士に慰められてしまった。
俺の育成環境で、唯一ネガティブな面を挙げるなら、
当時俺がまだ無職だったことだったが
「そんなの押し切れますよ、お父さんにはご実家におじいちゃんおばあちゃんがいて
おじちゃんおばちゃんと従兄妹たちまでいる。家族という単位としてこの上なく理想的ですから」
あと、もう一つ気がかりな点としては、裁判所は「母親原理主義」が根強いので、
裁判そのものが長引くとちょっと不安かも知れないということだった。
「これだけ証拠が揃ってるから、いきなり戦意喪失するようなすっごいの作りますね」
と弁護士が内容証明を書くことになった。
「すべてお任せしてよろしいでしょうか」
「はい♪とりあえず、ご実家がお近くならしばらくお子さんをご実家に避難させる準備を
されて下さい。奥さんに、こちらの動きを悟られないのが理想ですが、まあ悟られても大丈夫ですけどね」
興信所の書類封筒一杯の証拠は相当強力なものだったらしい。
予定としては、明後日内容証明を出す予定だったが
弁護士と話した次の日に、俺の家に内容証明が届いた。
俺も内容証明というのを出すのも初めてなら受け取るのも初めてだったが、
「俺乃元嫁子さんに、間男乃嫁実さんから内容証明郵便です」と
郵便配達に玄関先で言われて元嫁がパニックになった。
間男乃という間男の苗字と嫁実と言う名前で、さすがの俺も全て察した。
「おい、早くサインしろよ。郵便屋さん待ってるよ」
「ううううううう受け取りを拒否します!」
「あ…拒否ですか?」
初めて俺は今回大声を出した。郵便屋さんも玄関先にいるのに。
「全部わかってんだよ!!!いいからさっさとサインしろ!!!」
ご…ごめん、眠さ限界です。
続きは明日にさせて下さい。
すみません。
>>375
了解。じゃあそうします。