数年前の話。
誰かに話したかったんだ。
気持ちの整理がどうしてもつかなくて。
多少、脚色してるところもあるかもしれないが聞いてくれないか。
今から数年前、ちょうど俺が大学1年の頃だった。
クリスマスの話なんだけどその前にちょっとその年の夏の話からスタートする。
ちょうどその頃クラブ通いにハマッていて、あるイベントを機に彼女と知り合った。
彼女は友達と来ており、俺も友達と。
きっかけは彼女の友達が俺を気に入ってくれて声をかけて来たって流れ。
そうだな、彼女は小西真奈美に似てるから「真奈美」ってする。
真奈美の友達も可愛かったが、俺はなにより真奈美がめちゃくちゃ可愛く見えてしまった。。。
とりあえず4人でしゃべっていたんだけど、何故か俺の友達は先に帰ってしまい、俺と真奈美と真奈美の友達の3人でクラブで飲みながら話をしていた。
いやいや、ヤンキーじゃないよw
たまたま当時、クラブサウンドが流行ってて、俺も好きだったからさ。
んでその日はお互いの自己紹介とか、趣味とかはなして、終電もなくなるからってことで帰ることにした。
で、帰り際に番号交換しよっ♪って真奈美の友達が言い出したんだけど、真奈美の友達の携帯の電池がきれちゃったんだ。
仕方なく(嬉しい誤算だけど)俺は真奈美と番号交換をした。
7月下旬のできごと。
翌日、真奈美からすぐ連絡が来た。
「友達、めっちゃ惚れてたよー!」とか、「お互いサッカーが好きみたいだから、今度一緒に行けばー?」とか、他愛も無い話。
んで話の流れで「友達にアドレス教えといていい??」ってメールが来たんだ。
けどその時、俺は友達より真奈美のがタイプだったから、「いやー、俺真奈美さんのがタイプなんで別に教えなくっていいですよー!」ってストレートに返した。
どうせクラブで知り合った女だし、確かに可愛かったけどそんな重く考えることもしなかった。
んでしばらくしてまた真奈美から返事が来た。
「嬉しいこと言ってくれるじゃーん!ありがとうね!」って内容。
結局、真奈美の友達には俺のアドレスを教えず、そのまま何となく真奈美とメールし続けた。
スペックとか書いたほうがいいかな??
スペックよろしく
まぁ誰も見ていないようだから、淡々と書いてく。
俺:当時19歳
大学生
彼女なし
真奈美:当時21歳
ショップ店員
彼氏と別れたばっか
小西真奈美をギャルにした感じ
胸が大きかったw
ありがとう!
ちょっと長くもしれんが、相手してくれ!
で、何回かメールしているうちに友達の話とかもなくなり、真奈美と遊ぶ事となった。
ちょうど8月のお盆前後だったと思う。
真奈美の地元まで車で迎えに行き、ドライブだった。
といっても当時まだ免許を取って間もなかった俺はドライブコースとかも知ることも無く、何故か俺の家に遊びに来ることになってしまった。
で、展開ハヤスなんだが、その日にそのまま流れでHしてしまった。
俺もやりたい盛りだったし、向こうも俺の家に来た時点でそれくらいは考えていたとは思う。
Hの内容については割愛しようと思うが、ここは詳しく書いたほうがいいのかな?
俺もあの頃は軽かったし、「可愛い女とセクロスできた」くらいしか正直考えてなかった。
また遊ぼうねって言ってその日は別れ、別の日にまた会ってセクロスした。8月下旬の出来事。
正直、この2回で俺は真奈美にどっぷりはまっていたと思う。
当時、童貞ではなかったものの、年上とのセクロスは初めてだったし、可愛くて巨乳っていうのも自分的にはツボだった。
それだけではなく、性格とかもかなり好きだった。
なんというか、見た目とはギャップがあってキャピキャピしてないし、落ち着いてる。
当時の俺からしたら凄く大人なカッコいい女性だった。
で、8月最後の日。
俺は真奈美の一人暮らししている家に泊まりに行くことになった。
俺のバイトが終わる時間と、真奈美の仕事が終わる時間に合わせ、夜の遅い時間に電車で真奈美の家へ向かった。
1時間ちょっとでつく道のりだが、何故か凄くドキドキしたのを覚えている。
女と一晩一緒にいるのはその時が初めてだったから。
駅のホームで待ち合わせ。
俺を見つけ、笑顔をくれた真奈美は本当に可愛かった。
初めての街で初めての夜。
何もかもが新鮮だった。
コンビニでお菓子やジュースを買ったり、深夜に「おなか空いたー!」って言って近くの松屋に食べに行ったりw
2人でたばこをふかしながら次の日になった。
今までの流れからすればちょっと軽いかもしれないが、俺は真奈美に告白した。
「付き合って欲しい」と。
でも答えはNoだった。
まだ俺も若かったが、Noの意味が分からなかった。
セクロスもし、家にも泊まり、お互い彼氏&彼女がいない二人が何故付き合えないのか理解が出来なかった。
真奈美に理由を聞いても「もういいよ」と機嫌が悪くなる様子。
しつこく聞くのはあまり好きじゃなかったから、それ以上詮索しなかったが、なんか納得がいかない自分がいた。
けど、ふられても別に「もう会わない」とか言われるのではなく、その日もそのまま街に繰り出し、お茶したり買い物したり、プリクラを撮ったりして、いつものように笑顔で別れた。
9月に入った。
大学の長い夏休みも明け、講義が始まった。
一度だけ真奈美を大学のキャンパスの授業にもぐりで招待した。
それから何となく真奈美との距離が遠くなった。
俺がメールしてもスルーされたり、遊びに誘っても乗ってこなくなった。
俺もキャンパスライフをエンジョイしてたし、他の女の子とも仲良くしていたりっていうのがあったので、そこまで気にしなかった。
何となくそっけない雰囲気が続き、だんだんと距離が遠くなった。
相手にされてない感じ。
そりゃそうだ。相手は普通に可愛い年上のお姉さん。
俺みたいなのと遊んでくれていたあの夏の日々が奇跡みたいなもんだったんだ。
そう考えるようになっていた。
そして、いつのまにか時は12月。
大学生の12月なんていうのは当然、誰とどうやって過ごすかで持ちきりだ。
12月の中旬だったかな。久々に何となく真奈美にメールを送ったら、普通に帰ってきた。
ただ正直、真奈美はもはや自分にとって高嶺の花みたいな存在って思ってたから、クリスマスの相手とかそんな風にはまったく考えなかった。
もう今年のクリスマスは何もないなって、自分で答えを決めていた。
んで俺は23日に大学の友達とのスノーボードの約束をし、24日は夜までバイトの予定を入れた。
んで23日。俺は友達と約束どおりスノーボードへ。
バスツアーで長野のほうへ行ったんだ。
新雪で凄く楽しかった記憶がある。
で、その帰り道、真奈美からメールが来た。
「明日は何してるの?」と。
夜までバイトが入ってたからその旨を伝えると
「そっか。イブの夜一人で過ごすの嫌だったから、ちょっと連絡してみた」って帰ってきた。
俺のバイトは22時頃で終わりだったので、その後ならいいよと返事をした。
クリスマスイブの夜に思いもよらず約束が出来た。
12月24日
前日のスノーボードで疲れ果てた体でバイト。
本当だったらちょっと残業とかがあるんだけど、その日は店長が気を利かせて定時にちゃんと返してくれた。
俺は一度家に帰り、車で真奈美の家へと向かった。
車ではglobeとか、クリスマス系のクラブサウンドとかをかけながら向かった。
いつも通っているはずなのに、クリスマスイブの国道はいつにも増して賑やかな感じがした。
そして真奈美の家へ到着。
久々の真奈美だった。
9月に会って以来。あの笑顔は変わらずだった。
とりあえずどこか行こうということになり、定番だけど真奈美の家から割りと近い夜景スポットへ。
クリスマスイブの夜って事で、たくさんカップルがいた。
俺は真奈美にホットコーヒーを奢り、一緒に夜景を見た。
お互い周りのカップルについては言及しなかった。
冬の澄んだ空気の中で見た夜景は本当にキレイだった。
素直に来てよかったと思った。
特にやることもなかったので、今度はカラオケへ行くことに。
カラオケは交互に淡々と歌った。
GLAYのホワイトロードとか、キックザカンクルーのクリスマスイブRAPとか。
真奈美は松田聖子とかモー娘とか歌ってた。
カラオケも普通に楽しんだ。
で、お互いが曲を入れないタイミング(間合い?)みたいなのカラオケってあるじゃん?
その時に真奈美が話しかけてきた。
ちょっとシャワー浴びてきます。
おまたせ!
続き書きます!
真奈美が話しかけてきたのは「最近どう?」っていうような内容。
俺は最近のことをありのまま話した。
大学が楽しいこと。昨日までボードに行ってたこと。クリスマスは何の予定もなかったからバイトを入れていたこと。。
そんな感じ。
で、俺も同じように真奈美にどうだったのか聞いた。
「仕事は?」とか、「最近面白いことあった?」とか、「クリスマスも仕事って大変だよね」とか。。
んで、一通り近況報告をしたあと、また沈黙になった。
何故か曲を入れようとしない真奈美。
沈黙を破ったのは真奈美だった。
「彼女できた?」と唐突に。
正直真奈美にはそんなこと言われたくなかったが、
「いないいないwいたらクリスマスイブにはるばるここまで遊びに来ないよw」
と答えた。俺も聞き返したら真奈美がいろいろ話しはじめた。
「あたしなんとなく10月ごろからそっけなくなったでしょ?色々あったんだけど、実は1回だけ通り魔に襲われたんだ。
襲われたって言っても暴行されたとかじゃないし、怪我もなかったよ。
本当は1にも話したかったんだけど、なんとなくあの頃気まずい空気だったじゃん?
それに1ならこの話聞いたらすぐ『俺が守ってやる』とか言いそうだったし、そーゆーの考えると何となく言えなかった。」と
確かに俺なら、というより誰でも言うでしょ、そんなこと。
結局その通り魔の犯人と思われる人は別件で捕まったんだけど
(当時ニュースになってた)、この事がきっかけで真奈美の周りに結構男が寄ってくるようになったそうだ。
「だけどそういう人って何となく違うなって。あたしって意識されると結構分かっちゃうんだよね。
確かに怖かったけど、でもみんなには友達として心配して欲しかった」と。
当時の俺にはちょっと難しかった。
俺はだまって「うんうん」と、真奈美の話を聞いた。
「何となくそーゆーのって軽い感じじゃん?
あ、1のが軽いかww」と笑い話も折々に混じりながら話は続く。
「でね、この前(12月中旬)に久しぶりにメールくれたでしょ?
1からのメールだから、どうせまたクリスマス遊ぼうとかの軽い感じのメールだと思ってたんだ。
けど実際いつになってもそういう誘いも無くて、ちょっと驚いたんだよね。
なんか夏の頃はがっついてる感じだったのに、1変わった?って思った。」
「夏の頃の1は嫌いじゃなかったよ?でも告られたとき何かすごくがっつかれてる感じがして引いちゃったんだ。」
俺はゴメンと謝りながらも話は続く。
「けど何か今の1って、あたしのその思いに気づいてくれて変わってくれた感じじゃん?
あたし何も言ってないのに。嬉しいけどちょっと悔しかった。なんかちょっと会わない間に大人になってるなぁって思って」
「で、今日久々に会って夜景見たりしてて思ったんだ。
1と付き合ってもいいかもってw」
俺は???って感じだった。
これフラグたったのか?という感じ。
正直真奈美からそんなこと言われるのなんて予想外だったし、あの真奈美が俺に?!
混乱状態の中、何とか発した俺の言葉は「マジで?」が精一杯だった。
「プライドの高い女の子にここまで言わせてるんだから、あとはどうするか分かるでしょ?」とまで言われてしまった。
「ホントにいいのか?」と聞くとだまってコクンと頷く真奈美。
「俺と付き合って欲しい」と2度目の告白をした。完全に誘導されたがw
真奈美は笑顔で「うん!」と言った。
俺と真奈美はクリスマスイブの深夜に結ばれた。
すぐにゲーセンへ行ってプリクラを撮ったりしてその日は別れた。
自分でも信じられなかったが、本当に最高のクリスマスだった。
話はまだまだ続く。
殆ど見てる人はいないと思うが、クリスマスの夜に俺みたいに暇してる人がいれば付き合って欲しい。
とりあえず客観的に見たら「真奈美って結構調子のってね?」って思われるかも知れない。
だけどそうは思わないで欲しい。
なんというか、俺は完全に真奈美に心を読まれていた。
俺を理解してくれるとか、そーゆーのとは違う次元で。
今回の告白もそう。真奈美の思ったとおりに事が進んだんだと思う。
実は夜景行くって話だってそう。
そもそも出会ったとき、つまりクラブで真奈美の友達が俺に興味があるって言ってたときから、同時に真奈美は俺に興味を持ってたそうだ。
とにかく俺より1枚も2枚もウワテだった。
付き合ってからは本当に幸せだった。
俺の知らない世界を沢山教えてくれた。
真奈美は自然が好きだったから、海とか、山とかに一緒にドライブで行ったり、
街のレストランに連れてってもらったり。
2歳年が上なだけで、こんなに色々知ってるんだといつも思い、どんどん好きになった。
続けて
ありがとう!(TーT)
真奈美のことは大切にしていたが、まだ青二才だった俺
付き合って何ヶ月かしたところで、少しずつ不安が出てきてしまった。
何というか、学生と社会人の壁というか、凄くクールで大人な真奈美に必死に追いつこうとしている俺。
多分そんな状況は真奈美も気づいていたんだと思う。
喧嘩は1回もしなかったが、倦怠期みたいなのになってしまった。
それでも会ってはいた。
仲が悪いわけじゃないのに、何となくお互いがドライっていうか。。
それでもプラス思考な俺は「こういう恋愛が大人の恋なんだ」と自分に言い聞かせていた。
それでも真奈美は俺に優しかった。
遊びに行った帰りはいつも「今日もありがとう。気をつけて帰ってね」ってメールをくれたり。
けどそんな中、決定的なミスをしてしまった。
話の流れで俺の方から「もし別れたら」みたいな話をしてしまったのだ。
好きだからこそ、自分がどうなったら真奈美にふさわしいのか、模索した結果がこれだ。
結果、それが直接の原因だったのかは定かじゃないが、俺は真奈美にふられてしまった。
俺は何となく、自分が振られる流れだって事に気づいていた。
だからその時はショックではなかった。
「ああ、やっぱりな」って感じ。
真奈美の意思が固いこと、がっつくことを嫌うこと、等々、
その頃には俺も真奈美をよく知っていたから、それ以上真奈美にネゴらなかった。
別れたばかりのときって何となく納得というか「これでいいんだ」って気持ちになったりしないかな?
あの時の俺はそうだった。
それで後になって凄く後悔っていうバッドトリップに陥るっていうね。
案の定、俺はそうなった。
別れたばかりのときは「仕方ない」と思っていたが、いやそうじゃないだろう!と。
今までを考え直した。
俺は真奈美と付き合って何かが不満だったか?
俺が真奈美の何かを理解しようとしていたか?
俺は真奈美といて不幸せだったか?
答えは全部No。
となると、やはり会いたくなるのが男の性。
別れてから2ヶ月くらいは全く連絡も取らなかった。
いや正確には2度連絡したことがあったんだが、返事がこなかったんだ。
もう完全に嫌われていると思っていた。
メールも返ってこないし電話も出ない。
俺は彼女の職場に会いに行くことに決めた。
彼女の仕事が終わる時間に店のそばに行き、どうしても会いたいと連絡しようと。
季節はもう暖かくなっていた。
俺は真奈美に会いに行った。
夜にあの国道を走り、真奈美の働く店へと向かった。
けど結果、会えなかった。
俺が真奈美の店の近くについて、
「今お店の近くにいるんだ。どうしても話がしたいから、仕事が終わったら連絡して」
とメールをした。
返事が来た。本当にあの真奈美から返事が来た。
しかし内容は
「迷惑だからやめて」と。
あーもう終わったんだな・・・と素直に感じ、それ以上はなにも出来ずに家へと帰った。
6月になった。
梅雨と同じようになんとなくじっとりした、心地よくない気持ちだった。
けど大学はゼミも始まったりで相変わらず楽しかったし、真奈美の一件を忘れるように他の恋を探すようにもなってきた。
決して成功はしなかったけどw
けどやはりあれだけ好きだった女だ。
正直、真奈美は完璧すぎた。
嫌いなところなんて1つもなく、俺にとって間違いなくパーフェクトな女だった。
そんな女なんてほかにいやしない!
すぐに諦めがつくはずない!
その頃の俺はそう気づいていた。
一方でもはやどうにもならないのも事実で。
ジレンマを味わう毎日だった。
7月になった。
7月中旬以降は前期の考査が始まり、大学生ながら忙しい時期に突入した。
7月下旬には考査も一通り終わり、月末にゼミで飲み会を開催することになった。
試験からの開放感からかお酒は進み、すぐに酔っ払ってしまった。
そして家に帰って親と飲み会の話をしながらピザをほおばっていた。
確か夜の10時過ぎだった。
その時に携帯がなった。
忘れもしない。
メールの着信音は中山美穂&WANDSの「世界中の誰よりきっと」の着うただった。
メールは真奈美からだった。
信じられなかった。
内容は「今○○にいるんだ、1は何してるの?」と。
よく状況が理解できなかった。
とりあえずすぐに「ピザ食べてるよ」と返事をした。
明日続き書いてもいいかな?
おまたせ!
鳥とかつけたほうがいいのかな??
みんな保守ありがとう。
じゃ行きます。
真奈美からの返信は「そうだんだ。今一人で○○にいるんだけど、帰る気しなくてボーっとしてる」
だった。
俺は「そうかー。迎えにいってあげたい気持ちも山々だけど、珍しく今日は飲んじゃって・・
電車まだあるから帰ったほうがいいよ」と返した。
真奈美からまた返信が来た。
やはり唐突だった。
「そっか。まだ忘れられない?」
間違いなく真奈美は、俺が真奈美を忘れられないのを知っててこのメールを送ってきている。
あたりまえだろ!とか返事しようかと思ったけど、そうは返さなかった。
どうしていいかもわからなかったし。
「いいじゃんそーゆー話は」と濁して返事をした。
正直会いたい気持ちはあったが、その前に真奈美のお店に会いに行ったときに撃沈してたから、
いまさら会わす顔なんて無かった。
だからその時は当たり障りの無いメールをしていた。
けど次に真奈美から来たメールに俺は驚いた。
「今から会いたい。」だった。
正直、撃沈の思い出が頭をよぎってたので、今更あって何を話すんだ?と思った。
だが、真奈美の誘いを断る理由なんかないって感情もあり。。
気持ち的には5:5だった。
「今家だし、結構時間かかっちゃうよ」と返し、さりげなく今日は会わないという選択肢も匂わせた。
けど真奈美からの返信は
「いつまででも待つ。今日は帰らないし。だから来て」だった。
俺が行かないと言う選択をすれば、真奈美は一人(もしくは誰か他の人と)繁華街で一夜を明かすこととなる。
それなら俺が行って一緒にいようと必然的に思うはずだ。
ましてやそれが忘れられない人だったら。
俺は真奈美が待つ繁華街へ向かうことにした。
7月末のその日は確か土曜日だった。
終電に近い時間に電車に乗っても、そこまで沢山の乗客がいなかった。
俺はウォークマンでテンションのあがるクラブサウンドを聞いて気を紛らわした。
本来なら自宅から30分以上かかる道のりがあっという間だった。
俺は真奈美との待ち合わせ場所である駅前の交番に到着した。
真奈美は既にそこにいた。
「久しぶり!」と笑顔を俺にくれる真奈美。
今までモヤモヤしていた気持ちが一瞬にして吹っ飛んでしまった。
それは紛れも無く俺が大好きだった真奈美の笑顔だった。
今日来てよかった。と素直に思った。
俺も思わず顔が緩み、笑顔で「久しぶり」と返した。
俺は真奈美を見た時に気づいたことがあった。
真奈美は俺と付き合っていた時より痩せていた。
俺と付き合っていた時はもうちょっと肉つきがある感じだったから、さらに美人になった感じがした。
けどどこか不健康というか、心に引っかかった感じがした。
あまりに前よりスリムになったからかもしれないけど。
とりあえずオールできるところを探し、朝5時までやってるカラオケに行くことにした。
クリスマスのあの日と同じだった。
お互い交互に淡々と曲を入れていった。
俺はGLAYのBELOVEDとかサザンとかを入れた。
真奈美はクリスタルケイとかを入れてた。
そしてあの時と同じようにお互いが曲を入れない間合いが出来た。
そこで真奈美が口を開いた。
俺は「近況報告のタイミングかな?」と思っていた。
やはり近況報告だった。
ホント久しぶりだよねーから始まり、「お酒飲んできたんだねー」とか
「大学どう?」とか聞かれた。他愛も無い話。
俺の近況報告が終わった後、ちょっと仕掛けてみた。
「真奈美はどうなのよ?今日いきなり呼び出しかかってびっくりしたよ!
なんかあったの?」と。
真奈美の顔が一瞬変わった気がした。
少し「うーん」と言い、数十秒たった後に話はじめた。
笑顔で「あたし1と付き合っていた時より痩せたでしょ?」と言った。
俺は「そうだね、なんかあの時よりもさらにスタイル良くなっちゃったね!前から悪くはないけど!」と言った。
真奈美は「そっか~。」と言ってカラオケのモニターを眺めていた。
俺は「まぁ前の真奈美も今の真奈美もどっちもイイと思うよ!
強いて言えば前は『可愛く』て、今は『美人』かな?」と言った。
真奈美は困ったような笑顔で「ありがとう」と言った。
そして真奈美が握っていたマイクをテーブルに置いて再び話し始めた。
まぁそんなこともあるかな、と思って相槌をうちながら聞いていた。
「1と付き合っていた時はあんまり出さなかったんだけど、実は去年くらいからうつ病の症状がずーっとあったんだ。
頭が痛くなったり、やる気が起きなくなったり。。
でさ、あたしショップで働く前に○○(企業名)で働いていたの知ってるよね?
そこの職場やめちゃったのもうつ症状が原因だったんだ」と。
確かに思い出してみればところどころにそのような雰囲気はあった。
けど当時俺の友達にもうつ病の友達はいたし、それと比べれば真奈美は全然元気だった。
「ショップはシフト制だったし時間の融通が効いたからよかったんだけど
春先にちょっと症状が重くなって。お店に迷惑もかけられないからやめちゃったんだ。」
と言っていた。
ちょうど俺が撃沈した頃だ。そんな風になっていたなんて知らなかった俺は必死で謝った。
「ああそんなことあったっけwいいよそんな謝らなくても」と言っていた。
それどころではないくらい辛かったそうだ。
真奈美はその頃から病院に通いだした。
しかし医者の答えはいつも「軽いうつ症状」だった。
食欲も落ち、俺と付き合っていた頃より7~8キロも体重が落ちたそうだ。
7月に入り、うつ症状はまた「頭痛」に変わっていったらしい。
季節の変わり目だからかと思っていたらしいが、医者や真奈美の親からセカンドオピニオンを勧められ、行ってきたそうだ。
その結果を今日聞いてきたとの事。
結果「脳出血の疑い」だった。
疑いというレベルの軽度であったので、これから時間をかけて詳しく検査していくそうだ。
ただ場合によっては(病気の進行具合)によっては手術とかもありえるとの事。
正直、頭が真っ白になったそうだ。
ずっとうつ病だと思っていたのが脳の病気だったとは。
それに手術となれば髪の毛を全部剃らなきゃいけない。
不安で仕方なく、1に連絡してしまった。とカミングアウトされた。
真奈美はいつになく厳しい目をしていた。
俺もいきなりのカミングアウトに驚いてしまった。
多分、俺が真奈美に頼られたはじめての瞬間だった。
俺は言葉が見つからず、「大丈夫だよ。」とだけ言った。
真奈美はまた笑顔になり
「だといいね!
今はフリーターで少し時間があるから、またどっかに連れてってね!」と言った。
真奈美の笑顔はちょっと切なかった。
真奈美はまたマイクを握り、柴崎コウの『かたちあるもの』を歌っていた。
凄く上手かった。
そのままカラオケで5時まで二人で眠ってしまった。
翌朝。
夏の夜明けは早い。
カラオケを出るともう外は明るかった。
まだ始発まではちょっと時間があり、電車待ちの学生や若いお兄ちゃんお姉ちゃんが沢山いた。
俺と真奈美は眠い目をこすりながら、何となく駅とは反対方向へ散歩しに行った。
いつもの繁華街は中心部をちょっと離れるとまだ静かで、時々走る車のエンジン音がやたらとうるさく感じた。
その街はお互いが好きな街だった。
真奈美は「あそこにある専門学校を受けようとした」とか「この辺に家借りようかな?高いかな?w」とか
散歩しながら話した。
俺も「ここの美容室に通ってた」とか「よく部活の試合でこの道歩いたんだ」と話した。
始発から少しした時間。6時くらいだったか。
俺と真奈美は駅で別れた。
真奈美は「今日はありがとう。また遊ぼうね」と言った。
俺は「おう!いつでも声かけてくれ!」と言って別れた。
夏休みに入った。
俺は毎日真奈美のことを考えていた。
やっぱり真奈美の事が好きで好きで仕方なかった。
けど病気を懸念し、俺は自分の気持ちを隠した。
とにかく真奈美をフォローしようと。それだけを考えていた。
真奈美とまた遊ぶ日々が始まった。ちょうど真奈美と知り合って1年が経っていた。
俺と真奈美がバイトが休みの時は必ずと言っていいほど遊んだ。
お互い元カレ、元彼女という微妙な感じだった。
それでも真奈美との日々は付き合っている時以上に充実した、意味のあるものだった。
真奈美は俺の前では元気だった。
無理はさせないようにしていたけど、長時間のドライブとかもへっちゃらだった。
郊外のアウトレットとか、美味しいお店とか、とにかく走った。
真奈美も俺もドライブが相変わらず好きで、会うたびに新しいスポットを発見していった。
そして季節は秋へとなった。
秋には真奈美の誕生日があった。
誕生日の直後、真奈美の検査がある事を知っていたので、
応援の意もこめて、真奈美にネックレスをプレゼントした。
その日はたまたま体調が優れないらしく、プレゼントだけを渡しにいった。
激しい秋雨がふる日だった。
雨の日は頭痛がひどいらしく、ちょっと辛そうだったが、真奈美は本当に喜んでいた。
俺はその日に無理をさせてしまったことを少し後悔した。
その日も帰りにメールをくれた。
「プレゼントありがとう。大切にするね」と。
真奈美と遊んだ日の帰り道は今も必ずメールをくれる。
いつも帰り道の国道のオービスあたりで真奈美からメールが届く。
付き合う前も、付き合ってた頃も、今もそれは変わらなかった。
真奈美は俺の彼女じゃなかったけれど、俺は毎日幸せだった。
>>101
数年前だ
真奈美の誕生日の1週間後に検査があった。
結果は「1ヵ月後に再検査」だった。
検査の後、真奈美がちょっと不安になっている気がした。
そんなある日、真奈美と食事しているときに突然こんなことを言われた。
「結婚を考えている」と。
真奈美は続けて言った。
「別に今、結婚を考えている彼氏とかがいるわけじゃない。
けど正直、今の自分がどうすればいいのかわからない。
本当はあたしの脳が普通じゃないの、何となく自分でわかるの。
けど親にもこれ以上迷惑かけられないし、このまま働きたくてもアルバイトしかできないのは辛い。
そうしたらもう、私を支えてくれている人と結婚しかないのかなって。
今度、前の職場の人に紹介してもらう予定なんだ」と。
真奈美が大好きだった俺は反論した。
「そういうもんじゃないだろ!
それって、好きでもない男と結婚するかもって話だろ?
そんなの幸せになれるはず無いじゃん!
好きな人と結婚したほうが幸せに決まってるだろ!」
と言った。
けど真奈美の答えは
「1には分からないよ・・・恋愛と結婚は別物だよ。」と言った。
俺は返す言葉が無かった。
自暴自棄になっている真奈美がいた。
感情には出さなかったけど、言葉の節々で感じた。
俺はしばらく経ってからこれしかないと思って
「そんな事言うんだったら、俺と結婚しろよ。」
と真奈美に言った。
真奈美は衝撃だったみたいで、目を見開いて俺を見つめた。
「でも1はまだ学生じゃん。。」と。
「確かに学生だ。けど本音を言えば俺は今すぐ結婚してもいいと思ってる。
実際に結婚が物理的に無理でも、そのくらいの気持ちはあるんだ。
けど俺たちは今は付き合っているわけじゃない。」
真奈美は黙って頷いた
「正直本音を言えば真奈美と付き合いたいとも思うよ。
でも今、真奈美はそれを求めてないでしょ?」と
真奈美は何も言わなかった。
「今は無理かもしれない。気持ちが定まらないのも理解できないわけじゃない。
でも俺は真奈美のそばにやっぱりいたい。
俺は今、真奈美と付き合えなくてもいいから、まずはこの現状を二人で乗り越えよう。
その時に付き合うとか結婚とかを考えて欲しい。
もちろん俺なのか俺じゃないのかはその時の真奈美が決めることだけど」と言った。
真奈美は泣いていた。
真奈美も理解があった。
「1は学生。私のこともいいけど、まずはちゃんと大学卒業してよね」と泣き笑いながら言った。
俺も「当たり前だよ!主席で卒業してやるよ!」と言った。
付き合うとか結婚とかの話はそれからしなかった。
帰り道、またいつものオービス付近でメールが来た。
「ありがとうね。嬉しかったよ。」と
真奈美の誕生日の1ヵ月後、再検査があった。
長時間の検査で出てきた疑いは「脳ヘルニア」というものだった。
生まれつき血管が脆く、この状態になるまで殆どの人が気づかないらしい。
その報告をしてくれたのはちょうどある湖へドライブしにいってたときの事だった。
その日はもう冬が近い日だった。
12月に入ってから検査入院すると伝えられた。
いつもは日帰り検査だったから、検査入院となったことがびっくりだった。
「前言ってたとおり、髪の毛全部剃っちゃうかも。
そうしたらもう1とは会えないね。」と言っていた。
「大丈夫、大丈夫だよ」としか言えなかった。
湖付近の空気はとても澄んでいて、気持ちが良かった。
そして真奈美を家まで送って帰り、いつものオービス付近でやっぱりメールが来た。
「今日はありがとう!美味しい空気が吸えていい気分転換になったよ。
検査入院、頑張ってくるね。退院したらまた遊ぼう」
と言う内容だった。
俺も「辛くなったらいつでも俺に言えよ。
頑張らなくていいんだから。
真奈美が頑張ることが辛かったらいつでも俺に言ってくれ。
その時は変わりに俺が頑張るから」と伝えた。
>>104
けど親にもこれ以上迷惑かけられないし、このまま働きたくてもアルバイトしかできないのは辛い。
そうしたらもう、私を支えてくれている人と結婚しかないのかなって。
その考えがよくわからん。
>>113
自暴自棄だったから。
あと彼女は事情があって親と不仲で、手術とか検査とか極力親に負担をかけたくないっていうのをしきりと言ってた。
とにかく彼女の親を「ないもの」と思いたかったらしい。
夜にまた来る。
支援サンクス。
ちょっとずつ続きいきます。
検査入院の日になった。
12月6日だった。
当初、検査は1~2泊で終わると聞いていた。
しかし、連絡が来なかった。
2日、3日と待った。その後さらに1週間、2週間と待った
ぱったりと連絡は来なくなった。
そして俺にとって大切な日が来た。
クリスマスだ。
いや、正確に言うとクリスマスの前の23日、天皇誕生日のほうが期待していた。
また真奈美からサプライズでメールが来るんじゃないかって。
でもやはり23日には何も起きなかった。
翌24~25日は大学での参加自由の補講に出席していた。
俺の大学は20日過ぎには冬休みに入る。
だから24、25日の2日間の補講の日は、キャンパスに殆ど人がいなく、
とても寂しかった。
唯一、俺の事情を知る大学の友人がたまたま別の補講に出ていた。
補講の後に1杯だけ缶コーヒーを飲んで別れた。
これから彼女に会いに行くそうだ。
羨ましかった。
補講から帰ってきて夜になった。
1年前とは全く逆のクリスマス。
1年前が最高すぎたため、楽しくないどころか、辛かった。
でもその頃に俺が唯一思っていたことって、
「真奈美の体が無事でありますように」だった。
きっと真奈美は今も辛い思いしてるんだ。
俺だけ楽しむわけには行かない!
そう自分に言い聞かせた。
そして25日の夜、メールが来た。
真奈美からだった。
メールの内容はクリスマスケーキのデコメが入った可愛い感じだった。
文は当時のまま。
「久しぶり。元気にしてるかな?
私は手術が終わった後、体調が悪い日々が続いています。
まぁとりあえずメリークリスマス!風邪引かないようにね。」
だった。
検査入院→即手術という流れだったらしい。
俺は嬉しかった。
体調が悪いにしても真奈美が無事なこと。そして俺に連絡をくれたことが。
俺はすぐに返事をした。
「ありがとう!メリークリスマス。
とりあえず成功したみたいで良かった。
まずは体調優先。寒いし暖かくしてな。」
と返した。
聞きたいことは沢山あったが、細かいことは聞かなかった。
何となく聞いちゃいけない気がして。
真奈美からの返事はその後来なかった。
俺は体調を懸念して、とりあえずメールが来たことを喜んだ。
そして年が明けた。
お正月になった。
お正月といえばあけおめメール。
たまにしか連絡を取らない人でも、この時ばかりは連絡が取れる、年に1度の日。
みんなもそうじゃないかな。
俺は真っ先に真奈美にメールをした。
内容は無難な、返事をくれてもくれなくてもいいような感じ。
「あけましておめでとう。今年も宜しく。体調よくなったらまたドライブ行こうな」的な
でも真奈美からの返事は来なかった。
その後、真奈美からのメールは一切来なくなった。
俺は心配だった。
病気の事を詳しく聞かなかったから、真奈美がどういう状況か分からなかった。
ただ、真奈美を追い込みたくなかったから、メールの頻度は多くても月1回ペースで
しかもどうでもいい内容のものだけを送った。
最近こんなことがあった とか
ようやく暖かくなってきたね とか
でも真奈美からは一切返事が来なかった。半年以上来なかった。
心配というのは時間が経つと、どんどん悪いほうへ考えていってしまう。
最初は「手術で髪の毛を剃ったから会いたくないんだろう」とか思っていたんだけど
時間が経つと、「また再発したのかな?」とか、「もしや彼氏でもできたのかな?」とか
信じることしか出来ないのに、悪循環だった。
俺はただひたすら真奈美からの連絡を待った。
ちなみに文中でTELが無いのは、真奈美はTELが嫌いだったから。
付き合ってる時も別れた後もTELは殆どしなかった。
1年はゆうに越していた。
気づけば季節は5月になっていた。
もう気持ち的には諦めていた頃、真奈美からメールが来た。
「久しぶり!元気?」という、いたって普通の内容。
1年以上も待っていたのが信じられないくらい普通のメールだった。
俺はまたメールを返した。
けど、やはり真奈美の体調とかについては極力触れないようにした。
きっとまた向こうから話してくれると信じて。
「元気だよ。最近は○○が大変なんだよねー!」とか
「今、幼なじみの家で酒飲んでるんだー」とか
真奈美の返信も普通だった。
「いいねー!」とか「飲みすぎ注意だよ」とか。
なんか一気に病気の前の日々にフラッシュバックした気がした。
真奈美からのメールは死ぬほど嬉しかった。
そこから毎日とはいわずともちょくちょくメールした。
食べた美味しいスィーツの写メを送ってきたり、
俺からは街で見つけたハマーのリムジンの写メを送ったり。
本当に普通の友達とのメールだった。
そして何もないまま6月になった。
何故か真奈美と遊ぼうという話にはならなかった。
俺も真奈美の近況を詳しくは聞いていなかったし、遊びに誘っていいかも分からなかったから。
そんな矢先、真奈美から花火大会の誘いが来た。
「明日ヒマ?花火大会行こうよ!」と。
俺や真奈美がよく遊んだ街では、小規模ながら6月に花火大会があった。
俺は心の中でガッツポーズをした!
「行く!一緒にいこう!」と返事をした。
そして次の日。
その日は6月にしては寒く、朝からザンザン降りの雨だった。
待ち合わせ場所は、いつもの繁華街の駅前の交番。
そこに真奈美はいた。
本当に久しぶりだった。
相変わらず真奈美はキレイで、俺はこんな子と花火を2人で見れるかと思うと心が躍った。
病気だったという面影は微塵も感じさせなかった。
前に痩せてた時よりも少しまた肉つきがあり、健康そうだった。
俺を見つけ、俺の大好きな笑顔で近づいてきた。
「久しぶり!」と真奈美が言った。
俺も「久しぶりだね!」と笑顔で返した。
間違いない、紛れも無くあの真奈美の笑顔だった。
待ち合わせは昼の2時だったので、まだ大会まで時間があった。
喫茶店でお茶をし、ショッピング街をぶらぶらした後、一足早く花火会場近くの公園に足を運んだ。
雨は止み、街はちょっと夏の香りがした気がした。
2人で白いベンチに腰掛けた。
最初はいつもどおり他愛の無い話だった。
雨止んでよかったねー。とか
んで俺はこのタイミングで真奈美の近況を聞きだすことにした。
「てかホントに久しぶりだよなー。俺、結構病気の事、心配してたんだぜ!
でもなんか元気そうでなにより!」と仕掛けた。
真奈美は続けた。
「ありがとう。色々あったけど、元気になったよ!」と言った。
俺は嬉しかった。何よりその言葉が。
今まで信じてきて良かったって思った。
そして色々思い出話をした。
「結構俺、真奈美のことずーっと心配してたんだぜ」と伝えたり、
真奈美も
「いやー手術大変だったよー。」と笑顔で返してくれた。
いつか話した結婚のネタもちょっとバカにされて笑い話となった。
「あの時の1は若かったよね」と。
話は止まらず、気づいたら花火大会が始まっていた。
花火はきれいだった。
小規模の大会。かつ雨上がりということで人もそこまでいなく、地味な感じだった。
俺も花火を見つめながら「隣で空を見つめる真奈美は今、何を考えているのかな?」とか思っていた。
花火が終わり、別れる時間となった。
「今日はありがとう。花火はキレイだったし、なにより元気な真奈美が見れて俺ホント嬉しかったよ。」
と言った。
真奈美も笑顔で「うん。こちらこそありがとう。また遊ぼうね」と言った。
俺たちは別々の電車に乗って別れた。
夢のような時間だった。
そして1日、2日経つと自分の気持ちを自問自答するようになっていた。
と言っても答えはひとつ。
1年以上時間は経っていたけど、やはり俺は真奈美が大好きだった。
真奈美と会えない間に実際はいろんな女とも知り合いになったけど
俺の心にはやはり真奈美しかいなかった。
とにかく好きだ。それだけだった。
俺は真奈美に次あったとき、もう一度告白しようと決意した。
付き合わなかった。
真奈美から必ず連絡が来ると信じていたし、もし真奈美が病気で苦しんでいるのに俺だけが良い思いするのは
自分の中で許せなかったから。
しかし人生そう上手くはいかなかった。
また真奈美と連絡が取れなくなってしまった。
俺はまた真奈美を信じるだけの日々に戻ってしまった。
今回は理由が分からなかった。
やっぱり彼氏が新しくできたのか
俺を嫌いになったのか
はたまた病気が再発したのか。。
一切連絡が取れなくなった。
真奈美の誕生日にもメールを送った。
けど返信はなかった。
そしてクリスマスになった。
思い出すのは真奈美の事だけだ。
メールをしたけど、やはり返ってこなかった。
もちろんお正月も。
そしてさらに月日が流れた。
翌年の12月のクリスマス前の夜だった。
何と真奈美から着信が入っていた。
(俺は携帯をポケットに入れていて気づかなかった。)
俺は家に到着する寸前でその事に気づき、すぐに折り返した。
電話にはすぐに出た。
そこに出たのは真奈美ではなかった。
真奈美のお兄さんだった。
俺は混乱していた。何でお兄さんがでるんだ?
からかわれているのか?と
しかしそうでは無かった。
俺はそこで初めて知らされた。
真奈美が亡くなっていたと。
頭が真っ白になった。
けどどこか冷静な自分がいた。
真奈美のお兄さんは俺に落ち着いて聞くようにと促した。
俺はただ、「はい」としか答えられなかった。
「実は1年前の12月に真奈美は死んだんだ。
死因は悪性の脳腫瘍だった。」
お兄さんは続けた。
「1君には『私が死んでも1年間は1には伝えないで欲しい』と真奈美からずっと言われていたんだ。
俺は真奈美が亡くなってすぐに知らせたかったけど、生前真奈美はそれだけを頑なに拒んでいた。」
と言った。
俺は、「真奈美との約束を破らないでくれたんですね。ありがとうございます。」と言った。
その日の週末に初めて真奈美のお兄さんと会い、お墓参りに行った。
お兄さんは「ちょうど一回忌が終わって落ち着いたところだ」と言ってた。
ご実家にもお邪魔し、お線香をあげた。
そこで空白の1年についてお兄さんから教えてもらっていた。
俺と最後の花火大会に行った6月から、既に体調は芳しくなかったそうだ。
お兄さんの話だと、かなり無理して花火大会に行っていたとの事。
既にその頃は余命数ヶ月とかのレベルだったらしい。
真奈美はお兄さんとそこまで仲が良くなかったが、俺の話だけはしていてくれたみたいだ。
「花火大会後はずーっと入院だったんだ。でも自分がボロボロになっていく姿を、1君だけには見せたくなかったみたい。」
と言っていた。
付き合っていた時に1度だけ
「私が病気や怪我でボロボロになっちゃっても、1は私と付き合える?」
と真奈美に聞かれていたことを唐突に思い出した。
当然その頃は「当たり前だろ、俺真奈美大好きだもん!」といって笑っていたが、
当時からその予感が真奈美にはあったのかな。
いろんな真奈美との話や思い出が、お兄さんが一言一言しゃべる度に走馬灯のように蘇った。
お兄さんは、亡くなって1年間は連絡しなかった理由についても続けて語った。
俺が若手ながら社会人で頑張っているところに、真奈美起因で俺の気持ちを動揺させたくなかった
というのが一番だったらしい。
お兄さんは入院中にも、俺への連絡を真奈美に勧めたが、真奈美はただひたすらそれだけはと拒んだ。
それは真奈美の俺に対する気持ちの表れだと言った。
「最高の状態で幕を閉じたかったんだよ真奈美は」と。
お線香の火が消えるころ、帰ることにした。
最後にお兄さんはじめ、真奈美のご両親に真奈美の前で言った。
「こんな自分ですが、真奈美さんの事は結婚を考えるくらい好きでした。
本当に真奈美さんは私に色々なかけがえのないものをくれました。
心の底から感謝しています。」と。
ご両親も「1君と出会えて真奈美は本当に幸せだったと思います。
1君の事は私たちもよく入院中に聞いていました。
今まで本当にありがとうございました」と言われた。
玄関から出る時にお兄さんから封筒を渡された。
「真奈美から生前に渡されたものです。
帰宅したら中を見てください。」と言われた。
最後に「またお線香をあげに来てもいいですか?」とご家族に聞いたら、
「もちろん。真奈美も喜びます。本当にありがとうございました」と言われた。
俺は家に帰った。
ご家族と話はしたが、まだ真奈美が亡くなったって言う実感が無かった。
家についても終始、ボケーっとしていた。
1時間くらい何も考えずにラジオを聴いていた。
そんな時にラジオから俺と真奈美が花火大会に行った街の特集が流れ出した。
クリスマスイルミネーションがどうだとか、イベントがどうだとか。。
それを聞いて俺は我に帰り、真奈美のお兄さんから受け取った封筒の中身を見た。
封筒の中身は俺が真奈美の誕生日にあげたネックレスが入っていた。
「このネックレスをあげるから、検査頑張れ!」と応援の意を込めて送ったあのネックレスだった。
そしてもう一つ、ネックレスとは別に紙が入っていた。
真奈美の字で書かれ、実印まで押された婚姻届だった。
婚姻届の俺の名前を書く欄にポストイットが貼ってあった
「←1へ、書いてね!」と書いてあった。
どこかそのネックレスや封筒は真奈美の香りがした気がした。
俺は顔をクシャクシャにしながら、その婚姻届に名前を書いた。
「真奈美、本当にありがとう!」
ハッピーエンドじゃなくてすまんな。
これでおしまいです。
どうしてもクリスマス前になると思い出してしまう。
また真奈美からメールがくるんじゃないかって、変な錯覚だけどw
今までは心のうちに秘めていたけど、思い切って書いてみた。
こういう風に書いたのは初めてで、文章ヘタかもしれないけどそこはごめんよ。
思い出って言うのはどうしても美化されてしまい、
なかなか払拭できないね。
でも俺は思うよ。
きっと俺ほど幸せなクリスマスを過ごしたことをある人はいないって!
先週、お墓参り&お線香をあげにいってきたんだ。
でもやっぱりまだ真奈美が生きている気がして。
真奈美のご両親にも
「1君もいい人見つけて結婚してね!真奈美は1君がいつまでも引きずっているより、
誰か好きな人と結ばれて幸せになるほうがきっと喜ぶわよ」
と笑って話が出来るようになった。
今はひとり身か?
>>183
独身です。彼女もいません。
たまに夢とかで真奈美が出てくるたびに思うんだよね。
「あーやっぱり亡くなっていても、心の中では永遠に生き続けるんだな」って。
最近は気持ちも落ち着いてさ、プラス思考に考えるようにもなってきたよ。
元々暗いキャラじゃないし。
例えば俺の親父はもう死んでいるんだけど、
「真奈美のこと、天国で宜しく」ってオヤジの墓参りの時にお願いしたりしてさ。
俺の母親にもそーゆーこと話したんだけど、
「パパはおっぱいが大きい子が好きだからねぇ」と笑って話したり!
まぁ色々あるけど、俺も頑張らなきゃなw
そんなこんなを言ってるうちに、クリスマスももう終わりそうだ。
みんなは幸せなクリスマスを送れたか?
自慢話とかよかったら聞かせてくれな!
今北産業
状況説明求む
>>188
好きだった女が死んだって話さ。
>>189
今のところはまだだね。
付き合うと言う選択肢が導き出せない。
どうしても真奈美と比較してしまって・・・
ゆっくりでもいいから頑張ろうぜ。
>>191
ありがとう。
何が幸せなんだろうね?wと自問自答は続いてます。
けど俺もやっぱり結婚とかしてみたいのが正直な気持ちなんだ。
真奈美の両親もそうやって勧めてくれているわけだし、ゆっくり考えていこうと思ってる。
>>190
そっか。それは辛いな。
当時の音楽とか結構古い気がするし、だいぶ前の出来事かな?
比較してしまうと駄目なんだね。
真奈美さんは良い部分だけしか見せないようにしていた人だから、厳しいね。
でも、そこが最大に酷い女だったって思うよ。
1みたいな男に惚れられたら女は幸せだよ。
幸せな女を一人ふやしてやってよ。
んで、1も幸せになれ!
>>192
お互いちょっぴり古めの音楽が好きだったからね。
それでももう、結構な月日が経ったな。10年は経ってないけど。
最後まで最高な女だったと思うよ。
悪い部分なんて1度も多分見たことなかったし。
ありがとう。
幸せ探して俺も頑張る。
こんな大恋愛したら俺なら一生引きずってしまうわ・・・
彼女の為にも自分の為にもならないと分かってても駄目だわ
せめて1は前向きに生きてくれ
>>193
やっぱ大恋愛なのかな?
モヤモヤっとした気持ちのまま終わってしまったからね。
でも今は前向きに生きているよ。
人生ってホント分からないんだな
今まで2chで>>1さんみたいな話を結構聞いてきたけど、
みんなその後運命の人に出会って幸せに暮らしてる
>>1も苦労するかもしれないけど、真奈美さんの分幸せに生きてくれよ
>>197
そうだね。
俺もそういう話を見て、今回思い切って書き込んでみたんだ。
俺の場合、まだ運命の人とは多分出会ってないけど、
とりあえず仕事は順調だから、恋愛も頑張ってみようと思っている。
いい話だ
俺はそんな>>1が好きだ
あ、付き合えないけどね?ww
>>198
ウホッ!
俺も好きだよw
なんか書き込んでみんなのコメントみたらスッとしたよw
ありがとうな
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