再就職や身元保証人になってもらったりと何かと世話になっているK社長
今回のことも相談すると、翌日には新居を紹介してくれた
社長の知り合いの不動産屋に探させたらしい
2DKの文化住宅、しかも社長宅のすぐ近く
「なにかあったら俺(社長)の嫁さんにメイのことを頼め、お前だけでできることなんかたいしてないからな」
ありがたくて最敬礼した
奥さんと22歳と18歳の娘さんがいた
社長は俺の事情を以前から知っていたが、奥さんたちにはこの時初めて説明した
みんな泣いてくれた、その後でなんでもっと早く言わなかったの!って奥さんに怒られた
俺はもうほんとに社長家族には感謝しかなかった
そこからは本当にどたばたで書類がどうじゃの役所がこうじゃのとややこしい話のオンパレードだった
そして入学式には間に合わなかったが、4月中旬から新生活が始まった
まあ、最初の内は本当にぎこちない生活だったと思う
お互いにへんな遠慮というか、距離感がつかめないというか
それでもメイが笑って、学校の話をしたり、社長娘と遊びに行ったりしたことを楽しそうに話すのを見て、本当にこうしてよかったと思った
まさとおじちゃんってコテつけたらいかがだろう
>>53コテつけてみました
同居を始めてしばらくしたある夜、メイが寝ている部屋で悲鳴が聞こえた
部屋に行くと震えながら泣いているメイがいた
落ち着くのを待って話を聞くと、あの事故のことを夢で見たらしい
事故の瞬間のことはショックや気を失っていたことで憶えていないが、唯一憶えていることが救出直後の母親と話したことだった
血まみれの母親がメイを呼び、
「よかった、よかった、メイが無事で、よかった、お父さんは?」
メイはよくわからないまま答えた
「お父さん元気だよ、大丈夫だよ、お母さん、お母さん!」
ただ、もうそれに母親は答えず意識を失い、メイもそういう会話をしたことだけしか憶えていないそうだ
その場面を夢に見た、しかもこれまでも月に2~3回は見てどうしようもなくこわいらしい
俺の腕にしがみついて、泣きながらその話をしてくれた
話を聞きながら、何もしてやれないことがどうしようもなくつらかった
その日はメイが落ち着いたあと、ぐっすり眠るまでとなりいてやることしかできなかった
どう考えたってトラウマになるよな
その後も、たまに同じようなことがあり俺がメイの部屋でそばにいてやったり、逆にメイが俺の寝ている横に来て丸くなってることもあった
少なくとも、そうすることで安心できてたのなら良かったと思う
一応言っとくが、エロゲ展開はないので準備すんなよ?
わかってるよ
エロ小説だろ?
よし、あとは悲劇惨劇ツライサミシイはないぞ 多分
社長家族にはもう世話になりまくりだった
奥さんには食事の世話をしてもらったり、メイに家事を教えてもらったり
二人の娘さんには妹同然に可愛がってもらってよく一緒に遊び行ったりしてた
中1の時の体育祭、平日だってのに俺はむりやり有給取らされてなぜか社長一家とメイの応援に
行くなんて一言も言ってなかったから無茶苦茶びっくりしてたな
社長が馬鹿でかいだみ声で応援して、途中で裏声になって周りが大爆笑
帰ってからメイがなんて恥ずかしいことすんのよ、ばかって笑ってたのを良く覚えてる
あと、初潮が来た時の俺のオロオロッぷり
ある時トイレに入ったらトイレの床が血まみれでメイがいない
なんじゃこりゃ!と思って慌てふためいて、とりあえず社長の家に行ったら男は出てけって奥さんと娘さんたちに追い出された
あとになってその時の俺の様子をネタに今も茶化されてるよ
奥さんに教わって徐々にメイが料理をするようになった
中2の秋だったかな
突然、クリームシチューを市販のルーではなく手作りで作ることに凝り始めた
奥さんも作り方は知らなかったが協力していろいろやっていた
できたシチューは十分うまい物だったがメイはなぜか納得しない
さすがに毎週シチューが続くとなんでだ?と聞いてみたが、理由は教えてくれなかった
そんな話を奥さんとしゃべってたら実は、と教えてくれた
母親の得意料理がクリームシチューだったのだ
何年も前のことだから、作り方も味もよく憶えていない、けれど何とか作ってみたい
健気だね、この娘っ子はほんとに
だからしばらくシチューは続いたが文句言わずに食べてた
ある日に作ったシチューは自信作というか、記憶にあるシチューの味に近かったんだろうな
「どう、おいしい?どう?」
てしつこく聞いてくる
もちろんうまかったのでそう答えたら、妙にうれしそうにしてたからついポロっと聞いた
「お母さんのシチューができたか?」って
そしたらメイのやつ、硬直してなんか泣きそうな顔になったんだ
おもわず俺の方がおろおろしたな、あの時は
なんで知ってるの?ってメイに聞かれて、奥さんから聞いたことを話して思い出の味だろ良かったなって行ったんだよ
そしたらなんて行ったと思う?
「ごめんなさい」
だよ
なにがごめんなさいなんだ?って思うよな、さらに
「ごめんなさい、マサトおじさんがいるのに、お母さんのことなんか思い出そうとして」
だよ
まったくメイのバカたれが
メイの言うことによると、俺に世話になりまくってるのに今更両親のことを引っ張り出すようなことをしたら、俺が嫌がるんじゃないかって思ったらしい
いやいや、そんなこと思うならシチュー食わすなよ
と言うか俺がそんな風に考えると思ってたのか!
なんかそんな感じで無性に腹立たしくなって、哀しくなったな
だからこう言った
「メイがお父さんやお母さんのことを憶えていてあげなきゃどうする?
なんでそこで俺に遠慮するんだ?
俺がそんなことでメイのことを追いだすとでも思ってるのか、俺をバカにすんな
遠慮なんかすんな、バカ、もっとお父さんやお母さんのことを教えろ
俺の兄貴と義姉さんでもあるんだぞ」
こんなようなことを言った、と思う
多分、同居を始めてから初めて怒鳴ったと思う
で、メイ泣きながら謝る
俺、謝んなって言いながら泣きそう
その後、シチューは定番になりました