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114名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)14:54:11 ID: ID:X3u

いつもの日課になった祖父との散歩。
その日は、祖母もついてきていた。祖父は「家に帰れるぞ!」と突然言い始めた。
別にお医者や看護師さんも言ったわけじゃないが、「俺は家に帰るんだ」と言って駄々こねていた。本当に困っていた我が家だったが、先生も「うーん、何日ぐらい?」と聞くと、「3日でいい」と。
その後、人工呼吸器などを装着したままだったが、家に帰ることが叶った。
専用の車を呼んで、帰る準備をして、慌てて家を片付けて…………。たぶん先生は何も言わなかったけど、察していたんだと思う。
祖父は「絶対問題を起こさないで帰ってくる」と先生へ告げて、俺ら家族と一緒に家に帰った。

家に帰る途中、潰れた工場へ向かった。工場は動いていた。
俺は「見て帰る?」と尋ねると、

祖父は神妙な顔で「一目見れたから未練はねぇ、それにもう俺の工場じゃねーんだ。
この工場を誰かが動かしてくれているのが分かっただけで十分だ。もう未練はねぇ」と言ってた。

家に着くと真っ先に「ただいっまぁ!」と声をあげた。よく響いた。
そして「おーw家だ!w」と子供のように祖父ははしゃいでた。
その後、仏壇の前に行き、線香を立てた。

祖父は「最近、この匂いが恋しくてな」と言っていた。

 

115名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)15:11:18 ID: ID:X3u

その日は、祖父は家族で美味いものを食べてくれとお願いしてきた。

祖父は「出前だ出前だ!寿司でも蕎麦でも取れ!
豪華で美味いものを家族で食べている様子が見たい!」と。

もちろん、その準備はしていた。馴染みの寿司屋に電話を掛けた。
その馴染みの寿司屋は大層驚いた様子で、家に来て祖父に挨拶した。
祖父に弟子を紹介していた。そして弟子が握った物なので、コチラ私が握った物を……と、
結構お寿司をオマケしてくれた。
馴染みとは言えここ数年は読んでもいなかったのに、気前よく大将は来てくれた。

医者には止められていたと断ったあと、祖父はおちょこをしっかり握って「乾杯~」と声を上げた。
その後、下でペロッと舐めた。「くぅ、これだ!」という笑顔は忘れられない。

その後祖父はドリンク剤を飲んでいたが、ガマン鳴らずマグロの切り身を一切れ食べていた。
またしても「これだ!」という顔していた。幸せそうだった。

翌日は、取れなかった蕎麦の出前を取った。
蕎麦屋の出前は年末やお盆によく取っていたので仲は良かったが、
よっこらしょっ、どっこらしょ、ともう御年90を超える元女将がやってきて祖父に挨拶していった。

祖父は「えらくBBAになったじゃないか!」と言うと、
女将は「アンタに言われたくないわよ、オバケ!」と言い返してたw

その日は、麺つゆをチロッと舐めながら、祖父はニコニコとしていた。

3日目の朝、祖父は家を出た。
名残惜しそうに家の中を周り、迎えが来る前に近所を周り。

顔を焦る人みんなが驚く中、「バケテでたぞー」とイタズラしてた。
鼻に管は衝撃的だったらしく近所の子は泣いていた。

大分自分の中と、ボケていた時の記憶にあった、町並みと変わっていたらしく
祖父は「あー、時間が流れたんだな―」と言っていた。

 

116名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)15:20:44 ID: ID:X3u

病院に戻ると祖父は「あー、家がどっちだか分からね」と言っていた。
俺が「家はアッチだよ」と言うと、祖父は「家の方角はコッチだぞ~?」とニヤニヤしてた。
その後、また病室に戻ると「本当にどっちだか分からねーな。俺もボケてんな」と言ってた。戻ってしばらくして、早速散歩をしていた時。
祖父はあの桜の木の前で桜を見上げていた。俺は「あと二三ヶ月すれば桜が咲くっぽいよ」と話をすると、
祖父は「長いなぁ。待ち遠しいなぁ。みたいなぁ」と弱音を履いていた。多分、ちゃんと祖母→母→父→俺で順番に、四日掛けて散歩した次の日。
祖父は再び意識を失った。

最後に俺と散歩した時は
「仕事がんばれよー、俺がいなくてもがんばれよ~、
お前も男になって俺の代わりしてくれよー、庭もうちょい掃除してくれなー」と、やけに念押しされていた。

もちろん仕事の件も「あの先輩さんとは仲良くしとけ」とも言ってた。

祖母たち、他の人も似たようなこと言われていたらしく、全員心構えはできていた。
そんな中、「ふー、ちょっと疲れた」と言って眠った。その時父親はいなかった。

意識がないのが気がついたのは、その夜だった。

その日は、不思議な話だけどいつものようにお酒を飲もうとした時、
ビールは手から滑り落ちて飲めなくなるわ、他を冷やしていないのでしょうがない日本酒だ、
と思ったら、ビンのフタを明けたのに酒の匂いがせず、なんか気味悪がって俺も祖母も飲まずにいた。

医者から急いで来てくれとの一報。
父親は何の障害もなく会社を抜け出れて、俺らは誰も飲んでいないので車で急いで向かった。

 

118名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)15:28:58 ID: ID:X3u

いつものように祖父は寝ていた。
度々目撃していた昼寝をしている祖父の姿まんまだった。
大体俺らの気配に気がついて「お、よく来たな」と眠たそうに言うのだが、その時は何も言わなかった。どんなに揺すっても、声をかけても、祖父は目を覚まさなかった。
先生はすぐに「もうすぐ」と気が付き電話したそうだ。医者はすごいと思った。その日の内に様態は急変した。そして、祖父はあえなく逝ってしまった。

本当に死んでしまう寸前、ヒョコッと目を開けて何をを伝えたいような目をした後、
安心したのか、幸せそうだったのか、それとも何か別のことを考えていたのか。
やけに落ち着いた表情で、祖母の手や母の手を一通り、人差し指で撫でた後。

祖父は死んだ。享年98。
俺は誕生日から日も経ってないのに、という心境だった。

その後、祖父が選んだ親戚たちの中だけで、慎ましく葬式は執り行われた。
慎ましくなのか、微妙だが。

火葬も済み、先祖代々の墓に祖父が収まった時、祖父が妙に小さく思えた時の光景を思い出した。
ちょうどボケが直る前だ。それを思うと、またひょっこり現れる気がした。

残念ながらなにもなく、怪奇現象も何も起こらなかった。

火葬が済み「さー、後片付けかー」となった頃、参拝者として来ていた弁護士さんが封筒を持ってきた。
ミミズのように汚い文字で『遺言』と書かれていた。

すぐにそれが祖父が一生懸命に書いたものだと分かった。

 

119名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)15:37:18 ID: ID:X3u

遺言は数行にわたって書かれていた。
ただ達筆という訳じゃないが、本当に字が読めなかった。
たぶん頑張って書いたのだろう。弁護士が言うには両手で書いていたそうだ。「まあ、読めないということは祖父さんもおっしゃっていまして、コチラも預かっています」
弁護士さんはiPhoneを再生した。祖父『字が汚いから声も残しておく』と、祖父の声が流れた。そして最初に遺言の内容を読み上げた。

祖父『今までお前らには苦労をかけた。
もう残せるものはなにもなく、大体財産も(父親)さんに渡っていることも聞いた。
だから話す内容には期待しないよーに。

……俺を捨てずに大切にしてくれてありがとうございました。
俺は本当に幸せ者だった。
それなのに俺はお前らに沢山迷惑を掛けてすまなかった。許してほしい。

○○(祖母)、顔を叩いてすまなかった。そして俺と長く付き添ってくれて、本当にありがとう。

○○(母親)、家のために俺に代わって責任を継いでくれてすまなかった。お前は俺のいい娘だった!

○○(父親)、お前は次の大黒柱だ。絶対に負けるな。安心しろ俺が認めた息子だ!

○○(オレ)、お前はいつまでも俺の可愛い孫だ。死んでも孫だ。ありがとう。』

録音はこれだけではなかった。



 

121名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)15:45:35 ID: ID:X3u

弁護士『まだ録音できますよ?』

祖父『お、そうか……、途中で書くの大変で書かなかった。

正直、ボケていた時の出来事を少しは覚えている。
お前らが時々漏らしていたグチや、俺がしてしまったこともな。

でだ、俺も自分でも最初訳がわからなかった。
ついこないだまで平然とやっていた事を、急に理解出来た時はなにが起きたかと思った。
……ああ、これがボケなのか、老いなのか、情けないと思った。

俺はなんの罰当たりに最後に、こんな目にあわなきゃいけないと思った。

そして俺は怖かった。
俺がまともだと分かったら報復されるんじゃないかと。

あの時は思わず電話したが、後から怖くて怖くてしょうがなかった。

ところが、お前らは明るく俺を迎え入れてくれた。
俺が呼んだ手前、堂々とはしていたが、怖かったんだぞ。
だがけど、お前らは俺が思っているより優しかった。ずーっと俺の家族だった』

ここから祖父の声がかすれ始める。泣いてもいた。

祖父『そんなに俺を最後まで大切にしてくれてありがとう。
いや、ありがとうございました。
○○ ○○は、日本で一番の幸せ者だろうと思います。
いや、幸せ者だ。間違いなく

……まだ生きているのに、こんなこと言うと恥ずかしくてしゃーないな』

そこで録音は終わっていた。

 

123名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)15:54:39 ID: ID:X3u

駄目だ、その後泣いたことしか覚えていない。

とりあえず、俺は今元気に働いているし、父親ももちろん元気だし、
祖母も母も元気だよ、ぐらいしか書くことがないな……

よし、此処らへんで切り上げる。区切り悪くてゴメン。
二日と長々数時間、お付き合いありがとうございました。

 

124◆Zl0mWdgUwY2016/01/15(金)15:55:14 ID: ID:X3u

一応、コテ残ししておくよ。

あと簡単に質問に答えます。

 

125名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)15:56:09 ID: ID:eEc

感動した!最後まで書いてくれてありがとう!!

 

 

126Zl0mWdgUwY : 2016/01/15(金)15:58:13 ID: ID:X3u

>>125
感動なのか、それとも悲しい話なのか。
でも読んでくれていてありがとうございました。昨日は居なくなってすまない。本当にすまない。

 

128名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)16:53:09 ID: ID:AKj

書いてくれてありがとう
何か質問をと思ったが泣けて思いうかばない

 

130名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)19:22:01 ID: ID:6rg

話を聞かせてくれてありがとう!
大事な事を教わった気がする
難しいことだけど逆境でも人を思いやれる人間でありたいね

 

 

132Zl0mWdgUwY : 2016/01/15(金)19:44:19 ID: ID:X3u

思っていた以上に非難がなくて驚いた。
それに読んでくれていた人も結構いたんだな……
明日から仕事の日々に戻るのでまともなスレ返信できないと思う。
なので今日限りで受付は取りやめる事にするよ。
毎日コテつけて降臨も気持ち悪いのもありますし。
仕事がなけれな無くて辛くて、あったらあったで辛いんだよな……なんだこれ。
>128
急に言われて思いつくものではないしな。>130
でも、老人介護はマジで限界あるからな。
無理して自分が潰れてもしょうがないので、自分のキャパがゆる範囲で、
全力で大切や思いやって行くのが良いと思うよ。
マジで介護には心の限界が浮き彫りになる。

 

135名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)20:22:47 ID: ID:S34

乙!
ぼけてるときの頭で考えてる状況というか、
思考回路がどうなってたかとかお祖父さんから聞かなかった?

自分がぼけるって想像できないんだ・・・。

 

136名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)20:30:49 ID: ID:hgb

乙です!
自分の祖父が亡くなった時のことを思いながらよんでいたよ。といっても無くなる前、半年くらいだけど。
無くなる前、急にしっかりするのはうちの場合もそうで、あなたの文章の良さと相まって本気泣きしてしまいました。
あなたと、あなたが大事な人々に幸あれ!

 

 

138Zl0mWdgUwY : 2016/01/15(金)20:56:21 ID: ID:X3u

>>135
祖父自身も上手く言葉をまとめられていなかったから、
俺も上手くまとめる自信はないけど、

いた時のことは、寝ている時に見る夢の様に覚えているとは言っていました。
だから全部を全部覚えている訳じゃない、とボケても言っていました。

祖父は「別の誰かの記憶を見ている様な感じ」とも言っていましたね。
とにかく夢のような感じだ、と結論づけていました。

>>136
ご冥福をお祈りします。
そして、亡くなる前に急にしっかりしていましたか。
まあ先生(医者)の話でも、よくあることとは言っていましたからね。
ただ祖父のように長生きしたのと、本当にボケが治ったのは初めてのことだったそうです。

そして相まってしまいましたか……、そちらも大変だったようで。
よくプレゼンの司会進行資料作成において、日頃から目が滑る言われていたので心配していました。

 

139名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)21:07:49 ID: ID:BxS

>>138
心が温かくなったよ!

 

140名無しさん@おーぷん2016/01/15(金)21:31:09 ID: ID:by5

じいさん粋な人だな
ご冥福をお祈りします

 


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引用元:祖父が死ぬ三ヶ月前にまともになった話

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